「この飾かざりつけ、どうだい?」シェーマスはニッコリした。
「魔ま法ほう省しょうは気に入らないみたいなんだ」
「あら、国の紋章もんしょうを出して何が悪いっていうの?」フィネガン夫人が口を挟はさんだ。
「ブルガリアなんか、あちらさんのテントに何をぶら下げているか見てごらんよ。あなたたちは、もちろん、アイルランドを応おう援えんするんでしょう?」
夫人はハリー、ロン、ハーマイオニーを、キラリと見ながら聞いた。
フィネガン夫人に、ちゃんとアイルランドを応援するからと約束して、三人はまた歩きはじめた。もっとも、ロンは、「あの連中に取り囲まれてちゃ、ほかに何とも言えないよな?」と言った。
「ブルガリアのテントには、何がいっぱいぶら下がってるのかしら」ハーマイオニーが言った。
「見にいこうよ」ハリーが大きなキャンプ群を指差した。そこには赤、緑、白のブルガリア国旗が翩へん翻ぽんと翻ひるがえっていた。
こちらのテントには植物こそ飾りつけられてはいなかったが、どのテントにもまったく同じポスターがべたべた貼はられていた。真っ黒なゲジゲジ眉まゆの、無ぶ愛あい想そうな顔のポスターだ。もちろん顔は動いていたが、ただ瞬まばたきして顔をしかめるだけだった。
「クラムだ」ロンがそっと言った。
「なあに?」とハーマイオニー。
「クラムだよ! ビクトール・クラム。ブルガリアのシーカーの!」
「とっても気難しそう」ハーマイオニーは、三人に向かって瞬きしたり睨にらんだりしている大勢のクラムの顔を見回しながら言った。
「とっても気難しそうだって?」ロンは目をぐりぐりさせた。
「顔がどうだって関係ないだろ? すっげぇんだから。それにまだほんとに若いんだ。十八かそこらだよ。天才なんだから。まあ、今晩、見たらわかるよ」