焚たき火びのそばに魔法使いが一人「姿現すがたあらわし」でやってきた。ルード・バグマンとはものの見事に対照的だ。バグマンは昔着ていたスズメバチ模も様ようのチームのユニフォームを着て、草の上に足を投げ出している。バーティ・クラウチはしゃきっと背せ筋すじを伸ばし、非ひの打ちどころのない背広スーツにネクタイ姿の初しょ老ろうの魔法使いだ。短い銀ぎん髪ぱつの分け目は不自然なまでにまっすぐで、歯はブラシ状じょうの口くち髭ひげは、まるで定じょう規ぎを当てて刈かり込んだようだった。靴くつはピカピカに磨みがき上げられている。一ひと目め見て、ハリーはパーシーがなぜこの人を崇すう拝はいしているかがわかった。パーシーは規則を厳げん密みつに守ることが大切だと固く信じているし、クラウチ氏はマグルの服ふく装そうに関する規則を完かん璧ぺきに守っていた。銀行の頭取だと言っても通用しただろう。バーノンおじさんでさえこの人の正体を見破れるかどうか疑問だ、とハリーは思った。
「ちょっと座れよ、バーティ」ルードはそばの草むらをポンポン叩たたいて朗ほがらかに言った。
「いや、ルード、遠えん慮りょする」クラウチ氏の声が少し苛いら立だっていた。「ずいぶんあちこち君を探したのだ。ブルガリア側が、貴き賓ひん席せきをあと十二席設もうけろと強く要求しているのだ」
「ああ、そういうことを言ってたのか。わたしはまた、あいつが毛け抜ぬきを貸してくれと頼んでいるのかと思った。訛なまりがきつくて」
「クラウチさん!」パーシーは息もつけずにそう言うと、首だけ上げてお辞じ儀ぎをしたので、ひどい猫ねこ背ぜに見えた。「よろしければお茶はいかがですか?」
「ああ」クラウチ氏は少し驚いた様子でパーシーのほうを見た。
「いただこう――ありがとう、ウェーザビー君」
フレッドとジョージが飲みかけのお茶に咽むせて、カップの中にゲホゲホやった。パーシーは耳元をポッと赤らめ、急いでヤカンを準備した。