「まだそのことは公おおやけにしないとの約束だろう。詳細しょうさいがまだ――」
「ああ、詳細なんか!」バグマンはうるさいユスリカの群れを追い払うかのように手を振った。「みんな署しょ名めいしたんだ。そうだろう? みんな合意したんだ。そうだろう? ここにいる子供たちにも、どのみちまもなくわかることだ。賭かけてもいい。だって、事ことはホグワーツで起こるんだし――」
「ルード、さあ、ブルガリア側に会わないと」クラウチ氏はバグマンの言葉を遮さえぎり、鋭するどく言った。
「お茶をごちそうさま、ウェーザビー君」
飲んでもいないお茶をパーシーに押しつけるようにして返し、クラウチ氏はバグマンが立ち上がるのを待った。お茶の残りをグイッと飲のみ干ほし、ポケットの金貨を愉たのしげにチャラチャラいわせ、バグマンはどっこいしょと再び立ち上がった。
「じゃ、あとで! みんな、貴き賓ひん席せきでわたしと一いっ緒しょになるよ――わたしが解説するんだ!」
バグマンは手を振り、クラウチは軽く頭を下げ、二人とも「姿すがたくらまし」で消えた。
「パパ、ホグワーツで何があるの?」フレッドがすかさず聞いた。
「あの二人、何のことを話してたの?」
「すぐにわかるよ」ウィーズリーおじさんが微ほほ笑えんだ。
「魔ま法ほう省しょうが解かい禁きんするときまでは機き密みつ情報じょうほうだ」パーシーが頑かたくなに言った。「クラウチさんが明かさなかったのは正しいことなんだ」
「おい、黙だまれよ、ウェーザビー」フレッドが言った。
夕方が近づくにつれ、興こう奮ふんの高まりがキャンプ場を覆おおう雲のようにはっきりと感じ取れた。夕暮れには、凪ないだ夏の空気さえ、期待で打ち震ふるえているかのようだった。試合を待つ何千人という魔法使いたちを、夜の帳とばりがすっぽりと覆おおうと、最後の慎つつしみも吹き飛んだ。あからさまな魔法の印があちこちで上がっても、魔法省はもはやお手上げだとばかり、戦うのをやめた。