行ぎょう商しょう人にんがそこいら中にニョキニョキと「姿現すがたあらわし」した。超ちょう珍ちん品ぴんのみやげ物を盆ぼんやカートに山と積んでいる。光るロゼット――アイルランドは緑でブルガリアは赤だ――これが黄色い声で選手の名前を叫さけぶ。踊おどる三つ葉のクローバーがビッシリ飾られた緑のとんがり帽ぼう子し。ほんとうに吠ほえるライオン柄がらのブルガリアのスカーフ。打ち振ると国歌を演えん奏そうする両国の国旗。ほんとうに飛ぶファイアボルトのミニチュア模も型けい。コレクター用の有名選手の人形は、手に載のせると自じ慢まんげに手のひらの上を歩き回っていた。
「夏休み中ずっとこのためにお小こ遣づかい貯ためてたんだ」
ハリー、ハーマイオニーと一緒に物売りの間を歩き、みやげ物を買いながらロンがハリーに言った。ロンは踊るクローバー帽子と大きな緑のロゼットを買ったくせに、ブルガリアのシーカー、ビクトール・クラムのミニチュア人形も買った。ミニ・クラムはロンの手の中を往いったり来たりしながら、ロンの緑のロゼットを見上げて顔をしかめた。
「わあ、これ見てよ!」
ハリーは真しん鍮ちゅう製せいの双そう眼がん鏡きょうのようなものがうずたかく積んであるカートに駆かけ寄った。ただし、この双眼鏡には、あらゆる種類のおかしなつまみやダイヤルがびっしりついていた。
「万眼鏡だオムニオキュラーよ」セールス魔マンが熱心に売り込んだ。
「アクション再生ができる……スローモーションで……必要なら、プレイを一コマずつ静せい止しさせることもできる。大安売り――一個十ガリオンだ」
「こんなのさっき買わなきゃよかった」ロンは踊るクローバーの帽子を指差してそう言うと、万眼鏡をいかにも物ほしげに見つめた。