「ああ、ファッジ」マルフォイ氏は魔ま法ほう大だい臣じんのところまで来ると、手を差し出して挨あい拶さつした。
「お元気ですかな? 妻のナルシッサとは初めてでしたな? 息子のドラコもまだでしたか?」
「これはこれは、お初はつにお目にかかります」ファッジは笑顔でマルフォイ夫人にお辞じ儀ぎした。
「ご紹介いたしましょう。こちらはオブランスク大臣――オバロンスクだったかな――ミスター、ええと――とにかく、ブルガリア魔法大臣閣かっ下かです。どうせ私の言っていることは一言もわかっとらんのですから、まあ、気にせずに。ええと、ほかには誰か――アーサー・ウィーズリー氏はご存知でしょうな?」
一瞬いっしゅん、緊張きんちょうが走った。ウィーズリー氏とマルフォイ氏が睨にらみ合った。ハリーは最後に二人が顔を合わせたときのことをありありと覚えている。フローリシュ・アンド・ブロッツ書店で、二人は大おお喧げん嘩かしたのだ。マルフォイ氏の冷たい灰色の目がウィーズリー氏を一ひと舐なめし、それから列の端はしから端までズイッと眺ながめた。
「これは驚いた、アーサー」マルフォイ氏が低い声で言った。
「貴き賓ひん席せきの切符を手に入れるのに、何をお売りになりましたかな? お宅たくを売っても、それほどの金にはならんでしょうが?」
「アーサー、ルシウスは先ごろ、聖せいマンゴ魔ま法ほう疾しっ患かん傷しょう害がい病びょう院いんに、それは多額の寄き付ふをしてくれてね。今日は私の客として招待しょうたいなんだ」
マルフォイの言葉を聞いてもいなかったファッジが言った。
「それは――それは結けっ構こうな」ウィーズリーおじさんは無理に笑顔を取り繕つくろった。