マルフォイ氏の目がこんどはハーマイオニーに移った。ハーマイオニーは少し赤くなったが、怯ひるまずにマルフォイ氏を睨にらみ返した。マルフォイ氏の口元がニヤリとめくれ上がったのはなぜなのか、ハリーにははっきりわかっていた。マルフォイ一家は「純じゅん血けつ」であることを誇ほこりにし、逆に、ハーマイオニーのようにマグルの血を引くものを下等だと見下していた。しかし、魔法大臣の目が光っているところでは、マルフォイ氏もさすがに何も言えない。ウィーズリーおじさんに蔑さげすむような会え釈しゃくをすると、マルフォイ氏は自分の席まで進んだ。ドラコはハリー、ロン、ハーマイオニーに小ばかにしたような視し線せんを投げ、父親と母親に挟はさまれて席についた。
「むかつくやつだ」
ハリー、ハーマイオニー、ロンの三人がピッチに目を戻したとき、ロンが声を殺して言った。次の瞬間しゅんかん、ルード・バグマンが貴賓席に勢いよく飛び込んできた。
「みなさん、よろしいかな?」
丸顔がつやつやと光り、まるで興こう奮ふんしたエダム・チーズさながらのバグマンが言った。
「大だい臣じん――ご準備は?」
「君さえよければ、ルード、いつでもいい」ファッジが満足げに言った。
ルードはサッと杖つえを取り出し、自分の喉のどに当てて一ひと声こえ「ソノーラス! 響ひびけ!」と呪じゅ文もんを唱となえ、満まん席せきのスタジアムから沸わき立つどよめきに向かって呼びかけた。その声は大観衆の上に響き渡り、スタンドの隅すみ々ずみまでに轟とどろいた。
「レディーズ・アンド・ジェントルメン……ようこそ! 第四百二十二回、クィディッチ・ワールドカップ決勝戦に、ようこそ!」