ハーマイオニーは大きく舌した打うちし、「まったく、もう!」と言いながら、ハリーに手を伸ばして、席に引き戻した。
「さて、次は」ルード・バグマンの声が轟とどろいた。
「どうぞ、杖つえを高く掲かかげてください……アイルランド・ナショナルチームのマスコットに向かって!」
次の瞬間しゅんかん、大きな緑と金色の彗すい星せいのようなものが、ピッチに音を立てて飛び込んできた。上空を一周し、それから二つに分かれ、少し小さくなった彗星が、それぞれ両端りょうたんのゴールポストに向かってヒューッと飛んだ。突然、二つの光の玉を結んでピッチにまたがる虹にじの橋がかかった。観衆は花火を見ているように、「オォォォォーッ」「アァァァーッ」と歓かん声せいを上げた。虹が薄うすれると、二つの光の玉は再び合体し、一つになった。こんどは輝かがやく巨大なシャムロック―三つ葉のクローバー―を形作り、空高く昇り、スタンドの上空に広がった。すると、そこから金色の雨のようなものが降ふりはじめた――。
「すごい!」ロンが叫さけんだ。
シャムロックは頭上に高々と昇り、金貨の大雨を降ふらせていた。金貨の雨あま粒つぶが観客の頭といわず客席といわず、当たっては撥はねた。眩まぶしげにシャムロックを見上げたハリーは、それが顎あご鬚ひげを生はやした何千という小さな男たちの集まりだと気づいた。みんな赤いベストを着て、手に手に金色か緑色の豆ランプを持っている。
「レプラコーンだ!」群衆の割れるような大だい喝かっ采さいを縫ぬって、ウィーズリーおじさんが叫んだ。
金貨を拾おうと、椅子の下を探し回り、奪うばい合っている観衆がたくさんいる。
「ほーら」金貨をひとつかみハリーの手に押しつけながら、ロンがうれしそうに叫んだ。
「万まん眼がん鏡きょうの分だよ! これで君、僕にクリスマス・プレゼントを買わないといけないぞ、やーい!」