「そしてみなさん、はるばるエジプトからおいでの我らが審しん判ぱん、国際クィディッチ連れん盟めいの名チェア魔マン、ハッサン・モスタファー!」
痩やせこけた小こ柄がらな魔法使いだ。つるつるに禿はげているが、口くち髭ひげはバーノンおじさんといい勝負だ。スタジアムにマッチした純金じゅんきんのローブを着て堂々とピッチに歩み出た。口髭の下から銀のホイッスルを突き出し、大きな木箱を片方の腕に抱え、もう片方で箒を抱えている。ハリーは万眼鏡のスピードダイヤルを元に戻し、モスタファーが箒に跨またがり木箱を蹴けって開けるところをよく見た――四個のボールが勢いよく外に飛び出した。真っ赤なクアッフル、黒いブラッジャーが二個、そして、羽のある小さな金のスニッチ(ハリーはほんの一瞬いっしゅん、それを目もく撃げきしたが、あっという間に見失なった)。ホイッスルを鋭するどく一ひと吹ふきし、モスタファーはボールに続いて空中に飛び出した。
「試あぁぁぁぁぁぁぁい、開始!」バグマンが叫んだ。
「そしてあれはマレット! トロイ! モラン! ディミトロフ! またマレット! トロイ! レブスキー! モラン!」
ハリーは、こんなクィディッチの試合振りは見たことがなかった。万まん眼がん鏡きょうにしっかりと目を押しつけていたので、メガネの縁ふちが鼻柱はなばしらに食い込んだ。選手の動きが、信じられないほど速い――チェイサーがクアッフルを投げ合うスピードが速すぎて、バグマンは名前を言うだけで精せい一いっ杯ぱいだ。ハリーは万眼鏡の右横の「スロー」のつまみをもう一度回し、上についている「一いち場ば面めんずつ」のボタンを押した。するとたちまちスローモーションに切り替かわった。その間、レンズにはキラキラした紫むらさきの文字が明めい滅めつし、歓かん声せいが耳にビンビン響ひびいてきた。