「ホークスヘッド攻撃フォーメーション」ハリーは文字を読んだ。アイルランドのチェイサー三人が塊かたまり、トロイを真ん中にして、少し後ろをマレットとモランが飛び、ブルガリア陣じんに突っ込んでいった。次に「ポルスコフの計略けいりゃく」の文字が明滅した。トロイがクアッフルを持ち、ブルガリアのチェイサー、イワノバを誘ゆう導どうして急上昇したかのように見せかけながら、下を飛んでいたモランにクアッフルを落とすようにパスした。ブルガリアのビーターの一人、ボルコフが手にした小さな棍こん棒ぼうで、通過中のブラッジャーをモランの行く手めがけて強打した。モランがひょいとブラッジャーをかわしたとたん、クアッフルを取り落とし、下から上がってきたレブスキーがそれをキャッチした――。
「トロイ、先取点!」
バグマンの声が轟とどろき、スタジアムは拍手と歓声の大だい音おん響きょうに揺ゆれ動いた。
「一〇対〇、アイルランドのリード!」
「えっ?」ハリーは万眼鏡であたりをぐるぐる見回した。
「だって、レブスキーがクアッフルを取ったのに!」
「ハリー、普通のスピードで観戦しないと、試合を見み逃のがすわよ!」
ハーマイオニーが叫さけんだ。トロイがピッチを一周するウイニング飛行をしているところで、ハーマイオニーはピョンピョン飛び上がりながら、トロイに向かって両手を大きく振っていた。ハリーは急いで万眼鏡をずらして外を見た。サイドラインの外側で試合を見ていたレプラコーンが、またもや空中に舞い上がり、輝かがやく巨大なシャムロックを形作った。ピッチの反対側で、ヴィーラが不ふ機き嫌げんな顔でそれを見ていた。
ハリーは自分に腹を立てながらスピードのダイヤルを元に戻した。そのとき、試合が再開された。