ハリーもクィディッチについてはいささかの知識があったので、アイルランドのチェイサーたちが飛びきりすばらしいことがわかった。一いっ糸し乱れぬ連れん携けいプレー。まるで互いの位置関係で互いの考えを読み取っているかのようだった。ハリーの胸の緑のロゼットが、甲かん高だかい声でひっきりなしに三人の名を呼んだ。
「トロイ――マレット――モラン!」
最初の十分で、アイルランドはあと二回得点し、三〇対〇と点差を広げた。緑一色のサポーターたちから、雷らい鳴めいのような歓かん声せいと嵐のような拍手が湧わき起こった。
試合運びがますます速くなり、しかも荒っぽくなった。ブルガリアのビーター、ボルコフとボルチャノフは、アイルランドのチェイサーに向かって思い切り激はげしくブラッジャーを叩たたきつけ、三人の得意技を封ふうじはじめた。チェイサーの結けっ束そくが二度も崩くずされてバラバラにされた。ついにイワノバが敵てき陣じんを突とっ破ぱ、キーパーのライアンをもかわしてブルガリアが初のゴールを決めた。
「耳に指で栓せんをして!」
ウィーズリーおじさんが大声を上げた。ヴィーラが祝いの踊おどりを始めていた。ハリーは目も細めた。ゲームに集中していたかった。数秒後、ピッチをちらりと見ると、ヴィーラはもう踊りをやめ、クアッフルはまたブルガリアが持っていた。
「ディミトロフ! レブスキー! ディミトロフ! イワノバ――うおっ、これは!」
バグマンが唸うなり声を上げた。
十万人の観衆が息を呑のんだ。二人のシーカー、クラムとリンチがチェイサーたちの真ん中を割って一直線にダイビングしていた。その速いこと。飛行機からパラシュートなしに飛び降りたかのようだった。ハリーは万まん眼がん鏡きょうで落ちていく二人を追い、スニッチはどこにあるかと目を凝こらした。