リンチがやっと立ち上がった。緑をまとったサポーターたちがワッと沸わいた。リンチはファイアボルトに跨またがり、地を蹴けって空へと戻った。リンチが回復したことで、アイルランドは心しん機き一いっ転てんしたようだった。モスタファーが再びホイッスルを鳴らすと、チェイサーが、いままでハリーの見たどんな技も比べ物にならないようなすばらしい動きを見せた。
それからの十五分、試合はますます速く、激はげしい展開を見せ、アイルランドが勢いづいて十回のゴールを決めた。一三〇対一〇とアイルランドがリードして、試合はしだいに泥どろ仕じ合あいになってきた。
マレットがクアッフルをしっかり抱え、またまたゴールめがけて突進すると、ブルガリアのキーパー、ゾグラフが飛び出し、彼女を迎え撃うった。何が起こったやら、ハリーの見る間も与えず、あっという間まの出来事だったが、アイルランド応おう援えん団だんから怒りの叫さけびが上がった。モスタファーが鋭するどく、長くホイッスルを吹き鳴らしたので、ハリーはいまのは反則だったとわかった。
「モスタファーがブルガリアのキーパーから反則を取りました。『コビング』です――過か度どな肘ひじの使用です!」どよめく観衆に向かって、バグマンが解説した。
「そして――よーし、アイルランドがペナルティ・スロー!」
マレットが反則を受けたとき、怒れるスズメバチの大群のようにキラキラ輝かがやいて空中に舞い上がっていたレプラコーンが、こんどはすばやく集まって空中文字を書いた。
「ハッ! ハッ! ハッ!」
ピッチの反対側にいたヴィーラがパッと立ち上がり、怒りに髪かみを打ち振り、再び踊おどりはじめた。