レプラコーンがまた空中に舞い上がり、巨大な手の形になり、ヴィーラに向かって、ピッチ一いっ杯ぱいに下品なサインをしてみせた。これにはヴィーラも自じ制せい心しんを失った。ピッチの向こうから襲撃しゅうげきをかけ、レプラコーンに向かって火の玉のようなものを投げつけはじめた。万眼鏡で覗いていたハリーには、ヴィーラがいまやどう見ても美しいとは言えないことがわかった。それどころか、顔は伸びて、鋭するどい、獰どう猛もうな嘴くちばしをした鳥の頭になり、鱗うろこに覆おおわれた長い翼つばさが肩から飛び出していた。
「ほら、おまえたち、あれをよく見なさい」
下の観客席からの大だい喧けん騒そうにも負けない声で、ウィーズリーおじさんが叫さけんだ。
「だから、外見そとみだけにつられてはだめなんだ!」
魔ま法ほう省しょうの役人が、ヴィーラとレプラコーンを引き離すのに、ドヤドヤッとグラウンドに繰くり出したが、手に負えなかった。一方、上空での激げき戦せんに比べればピッチでの戦いなど物の数ではない。ハリーは万まん眼がん鏡きょうで目を凝こらし、あっちへこっちへと首を振った。なにしろ、クアッフルが弾だん丸がんのような速さで手から手へと渡る――。
「レブスキー――ディミトロフ――モラン――トロイ――マレット――イワノバ――またモラン――モラン――モラン決めたぁ!」
しかし、アイルランド・サポーターの歓声も、ヴィーラの叫びや魔法省役人の杖つえから出る爆発音、ブルガリア・サポーターの怒り狂う声でほとんど聞こえない。試合はすぐに再開した。こんどはレブスキーがクアッフルを持っている――そしてディミトロフ――。
アイルランドのビーター、クィグリーが、目の前を通るブラッジャーを大きく打ち込み、クラムめがけて力のかぎり叩たたきつけた。クラムは避よけそこない、ブラッジャーがしたたか顔に当たった。
競きょう技ぎ場じょうが呻うめき声一色になった。クラムの鼻が折れたかに見え、そこら中に血が飛び散った。しかし、モスタファー審しん判ぱんはホイッスルを鳴らさない。他のことに気を取られている。ハリーはそれも当然だと思った。ヴィーラの一人が投げた火の玉で、審判の箒ほうきの尾が火事になっていたのだ。