赤いローブを血に染そめ、血ち糊のりを輝かがやかせながら、クラムがゆっくりと舞い上がった。高々と突き上げたこぶしの、その手の中に、金色の煌きらめきが見えた。
大観衆の頭上にスコアボードが点てん滅めつした。
ブルガリア 一六〇 アイルランド 一七〇
何が起こったのか観衆には飲み込めていないらしい。しばらくして、ゆっくりと、ジャンボジェット機が回転速度を上げていくように、アイルランドのサポーターのざわめきがだんだん大きくなり、歓かん喜きの叫びとなって爆発した。
「アイルランドの勝ち!」
バグマンが叫んだ。アイルランド勢ぜいと同じく、バグマンもこの突然の試合終了に度ど胆ぎもを抜かれていた。
「クラムがスニッチを捕りました――しかし勝者はアイルランドです――何たること。誰がこれを予想したでしょう!」
「クラムはいったい何のためにスニッチを捕ったんだ?」ロンはピョンピョン飛び跳はね、頭上で手を叩たたきながら大声で叫んだ。「アイルランドが一六〇点もリードしてるときに試合を終わらせるなんて、ヌケサク!」
「絶対に点差を縮められないってわかってたんだよ」大だい喝かっ采さいしながら、ハリーは騒音に負けないように叫び返した。「アイルランドのチェイサーがうますぎたんだ……クラムは自分のやり方で終わらせたかったんだ。きっと……」
「あの人、とっても勇ゆう敢かんだと思わない?」
ハーマイオニーがクラムの着地するところを見ようと身を乗り出した。魔ま法ほう医いの大集団が、戦いもたけなわのレプラコーンとヴィーラを吹き飛ばして道を作り、クラムに近づこうとしていた。
「めちゃくちゃ重じゅう傷しょうみたいだわ……」