ハリーはまた万まん眼がん鏡きょうを目に当てた。レプラコーンが大喜びでピッチ中をブンブン飛んでいるので、下で何が起こっているのかなかなか見えない。やっとのことで魔法医に取り囲まれたクラムの姿をとらえた。前にも増してむっつりした表情で、医い師し団だんが治ち療りょうしようとするのを撥はねつけていた。その周りでチームメートががっかりした様子で首を振っている。その少し向こうでは、アイルランドの選手たちが、マスコットの降ふらせる金貨のシャワーを浴びながら、狂きょう喜きして踊おどっていた。スタジアム一いっ杯ぱいに国旗が打ち振られ、四し方ほう八はっ方ぽうからアイルランド国歌が流れてきた。ヴィーラは意い気き消しょう沈ちんして惨みじめそうだったが、いまは縮んで、元の美しい姿に戻っていた。
「まあ、ヴぁれヴぁれは、勇ゆう敢かんに戦った」
ハリーの背はい後ごで沈んだ声がした。振り返ると、声の主はブルガリア魔ま法ほう大だい臣じんだった。
「ちゃんと話せるんじゃないですか!」ファッジの声が怒っていた。「それなのに、一日中私にパントマイムをやらせて!」
「いやぁ、ヴぉんとにおもしろかったです」ブルガリア魔法大臣は肩をすくめた。
「さて、アイルランド・チームがマスコットを両脇りょうわきに、グラウンド一周のウイニング飛行をしている間に、クィディッチ・ワールドカップ優ゆう勝しょう杯はいが貴き賓ひん席せきへと運び込まれます!」バグマンの声が響ひびいた。
突然眩まばゆい白い光が射さし、ハリーは目が眩くらんだ。貴賓席の中がスタンド中から見えるよう魔法の照明が点ついたのだ。目を細めて入口のほうを見ると、二人の魔法使いが息を切らしながら巨大な金の優勝杯を運び入れるところだった。大優勝杯はコーネリウス・ファッジに手渡されたが、ファッジは一日中むだに手話をさせられたことを根に持って、まだぶすっとしていた。
「勇ゆう猛もう果か敢かんな敗者に絶大な拍手を――ブルガリア!」バグマンが叫さけんだ。
すると、敗者のブルガリア選手七人が、階段を上がってボックス席へ入ってきた。スタンドの観衆が、賞讃しょうさんの拍手を贈った。ハリーは、何千、何万という万まん眼がん鏡きょうのレンズがこちらに向けられ、チカチカ光っているのを見た。