ハーマイオニーはまたかという声を出し、ハリーと二人でロンの腕をしっかりつかみ、回れ右させて、とっとと歩かせた。ヴィーラとその崇すう拝はい者しゃの声が完全に遠のいたころ、三人は森の奥深くに入り込んでいた。三人だけになったらしい。周囲がずっと静かになっていた。
ハリーはあたりを見回しながら言った。
「僕たち、ここで待てばいいと思うよ。ほら、何キロも先から人の来る気配も聞こえるし」
その言葉が終わらないうちに、ルード・バグマンがすぐ目の前の木の陰から現れた。
二本の杖つえ灯あかりから出る微かすかな光の中でさえ、ハリーはバグマンの変わり様をはっきり読み取った。あの陽気な表情も、ばら色の顔色も消え、足取りは弾はずみがなく、真っ青さおで緊張きんちょうしていた。
「誰だ?」バグマンは、目を瞬しばたたきながらハリーたちを見下ろし、顔を見定めようとした。
「こんなところで、ポツンと、いったい何をしているんだね?」
三人とも驚いて、互いに顔を見合わせた。
「それは――暴ぼう動どうのようなものが起こってるんです」ロンが言った。
バグマンがロンを見つめた。「なんと?」
「キャンプ場です……誰かがマグルの一家を捕まえたんです……」
「なんてやつらだ!」バグマンは度どを失い、大声で罵ののしり、あとは一言も言わず、ポンという音とともに「姿すがたくらまし」した。
「ちょっとズレてるわね、バグマンさんて。ね?」ハーマイオニーが顔をしかめた。
「でも、あの人、すごいビーターだったんだよ」そう言いながら、ロンはみんなの先頭に立って小道を逸それ、ちょっとした空地へと誘いざない、木の根元の乾かわいた草むらに座った。
「あの人がチームにいたときに、ウイムボーン・ワスプスが連続三回もリーグ優勝したんだぜ」
ロンはクラム人形をポケットから取り出し、地面に置いて歩かせ、しばらくそれを見つめていた。本物のクラムと同じに、人形はちょっとO脚オーきゃくで、猫ねこ背ぜで、地上では箒ほうきに乗っているときのようにカッコよくはなかった。ハリーはキャンプ場からの物音に耳を澄すませた。しーんとしている。暴ぼう動どうが治おさまったのかもしれない。