「みんな無事だといいけど」しばらくしてハーマイオニーが言った。
「大丈夫さ」ロンが言った。
「君のパパがルシウス・マルフォイを捕まえたらどうなるかな」ロンの隣となりに座り、クラム人形が落ち葉の上をとぼとぼと歩くのを眺ながめながら、ハリーが言った。
「おじさんは、マルフォイの尻しっ尾ぽをつかみたいって、いつもそう言ってた」
「そうなったら、あのドラコのイヤミな薄うす笑わらいも吹っ飛ぶだろうな」ロンが言った。
「でも、あの気の毒なマグルたち」ハーマイオニーが心配そうに言った。「下ろしてあげられなかったら、どうなるのかしら?」
「下ろしてあげるさ」ロンが慰なぐさめた。「きっと方法を見つけるよ」
「でも、今夜のように魔ま法ほう省しょうが総動員されてるときにあんなことをするなんて、狂ってるわ」
ハーマイオニーが言った。
「つまりね、あんなことをしたら、ただじゃすまないじゃない? 飲みすぎたのかしら、それとも、単に――」
ハーマイオニーが突然言葉を切って、後ろを振り向いた。ハリーとロンも急いで振り返った。誰かが、この空地に向かってよろよろとやってくる音がする。三人は暗い木々の陰から聞こえる不規則な足音に耳を澄すませ、じっと待った。突然足音が止まった。
「誰かいますか?」ハリーが呼びかけた。
しんとしている。ハリーは立ち上がって木の陰から向こうを窺うかがった。暗くて、遠くまでは見えない。それでも、目の届かない所に誰かが立っているのが感じられた。
「どなたですか?」ハリーが聞いた。
すると、何の前まえ触ぶれもなく、この森では聞き覚えのない声が静寂せいじゃくを破った。その声は恐怖に駆かられた叫さけびではなく、呪じゅ文もんのような音を発した。