ハリーの髪の波立ちが収まった。頭をもう少し高く上げてみた。目の前の魔法使いが杖を下ろした。身を捻よじると、ウィーズリーおじさんが真っ青さおになって、大おお股またでこちらにやってくるのが見えた。
「ロン――ハリー――」おじさんの声が震ふるえていた。「――ハーマイオニー――みんな無事か?」
「どけ、アーサー」無ぶ愛あい想そうな冷たい声がした。
クラウチ氏だった。魔ま法ほう省しょうの役人たちと一いっ緒しょに、じりじりと三人の包囲網もうを狭せばめていた。ハリーは立ち上がって包囲陣と向かい合った。クラウチ氏の顔が怒りで引きつっていた。
「誰がやった?」刺さすような目で三人を見ながら、クラウチ氏がバシリと言った。
「おまえたちの誰が『闇やみの印しるし』を出したのだ?」
「僕たちがやったんじゃない!」ハリーは髑どく髏ろを指差しながら言った。
「僕たち、何にもしてないよ!」ロンは肘ひじをさすりながら、憤ふん然ぜんとして父親を見た。
「何のために僕たちを攻こう撃げきしたんだ?」
「白しら々じらしいことを!」クラウチ氏が叫んだ。
杖をまだロンに突きつけたまま、目が飛び出している――狂きょう気きじみた顔だ。
「おまえたちは犯罪の現場にいた!」
「バーティ」長いウールのガウンを着た魔女が囁ささやいた。
「みんな子供じゃないの。バーティ、あんなことができるはずは――」
「おまえたち、あの印はどこから出てきたんだね?」ウィーズリーおじさんがすばやく聞いた。
「あそこよ」ハーマイオニーは声の聞こえたあたりを指差し、震ふるえ声で言った。
「木立の陰に誰かがいたわ……何か叫んだの――呪じゅ文もんを――」
「ほう。あそこに誰かが立っていたと言うのかね?」クラウチ氏が飛び出した目を、こんどはハーマイオニーに向けた。顔中にありありと「誰が信じるものか」と書いてある。
「呪じゅ文もんを唱となえたと言うのかね? お嬢じょうさん、あの印をどうやって出すのか、大変よくご存ぞん知じのようだ――」