小枝が折れる音、木の葉の擦こすれ合う音がして、ザックザックという足音とともにディゴリー氏が木立の陰から再び姿を現した。両腕に小さなぐったりしたものを抱えている。ハリーはすぐにキッチン・タオルに気づいた。ウィンキーだ。
ディゴリー氏がクラウチ氏の足あし下もとにウィンキーを置いたとき、クラウチ氏は身動きもせず、無言のままだった。魔法省の役人がいっせいにクラウチ氏を見つめた。数秒間、蒼そう白はくな顔に目だけをメラメラと燃やし、クラウチ氏はウィンキーを見下ろしたまま立ちすくんでいた。やがてやっと我に返ったかのように、クラウチ氏が言った。
「こんな――はずは――ない」途と切ぎれ途切れだ。「絶対に――」
クラウチ氏はさっとディゴリー氏の後ろに回り、荒々しい歩ほ調ちょうでウィンキーが見つかったあたりへと歩き出した。
「むだですよ。クラウチさん」ディゴリー氏が背はい後ごから声をかけた。「そこにはほかに誰もいない」
しかしクラウチ氏は、その言葉を鵜う呑のみにはできないようだった。あちこち動き回り、木の葉をガサガサ言わせながら、茂しげみを掻かき分けて探す音が聞こえてきた。
「何とも恥さらしな」ぐったり失しっ神しんしたウィンキーの姿を見下ろしながら、ディゴリー氏が表情を強こわばらせた。
「バーティ・クラウチ氏の屋や敷しきしもべとは……何ともはや」
「エイモス、やめてくれ」ウィーズリーおじさんがそっと言った。「まさかほんとうにしもべ妖よう精せいがやったと思ってるんじゃないだろう? 『闇やみの印しるし』は魔法使いの合図だ。創つくり出すには杖つえがいる」
「そうとも」ディゴリー氏が応おうじた。「そしてこの屋敷しもべは杖を持っていたんだ」
「何だって?」
「ほら、これだ」ディゴリー氏は杖を持ち上げ、ウィーズリーおじさんに見せた。
「これを手に持っていた。まずは『杖の使用規則』第三条の違い反はんだ。ヒトにあらざる生物は、杖を携けい帯たいし、またはこれを使用することを禁ず」