ちょうどそのとき、またポンと音がして、ルード・バグマンがウィーズリーおじさんのすぐ脇わきに『姿現すがたあらわし』した。息を切らし、ここがどこかもわからない様子でくるくる回りながら、目をギョロつかせてエメラルド色の髑どく髏ろを見上げた。
「『闇の印』!」バグマンが喘あえいだ。仲間の役人たちに何か聞こうと顔を向けた拍ひょう子しに、危あやうくウィンキーを踏ふみつけそうになった。
「いったい誰の仕業しわざだ? 捕まえたのか? バーティ! いったい何をしてるんだ?」
クラウチ氏が手ぶらで戻ってきた。幽ゆう霊れいのように蒼そう白はくな顔のまま、両手も歯ブラシのような口くち髭ひげもピクピク痙けい攣れんしている。
「バーティ、いったいどこにいたんだ?」バグマンが聞いた。
「どうして試合に来なかった? 君の屋敷しもべが席を取っていたのに――おっとどっこい!」
バグマンは足あし下もとに横たわるウィンキーにやっと気づいた。
「この屋敷しもべはいったいどうしたんだ?」
「ルード、私は忙いそがしかったのでね」
クラウチ氏は、相変わらずギクシャクした話し方で、ほとんど唇くちびるを動かしていない。
「それと、私のしもべ妖精は『失しっ神しん術じゅつ』にかかっている」
「『失神術』? ご同どう輩はいたちがやったのかね? しかし、どうしてまた――?」
バグマンの丸いテカテカした顔に、突とつ如じょ「そうか!」という表情が浮かんだ。バグマンは髑どく髏ろを見上げ、ウィンキーを見下ろし、それからクラウチ氏を見た。
「まさか! ウィンキーが? 『闇の印』を創った? やり方も知らないだろうに! そもそも杖がいるだろうが!」
「ああ、まさに、持っていたんだ」ディゴリー氏が言った。
「杖を持った姿で、わたしが見つけたんだよ、ルード。さて、クラウチさん、あなたにご異い議ぎがなければ、屋や敷しきしもべ自身の言い分を聞いてみたいんだが」