クラウチ氏はディゴリー氏の言葉が聞こえたという反応をまったく示さなかった。しかし、ディゴリー氏は、その沈ちん黙もくがクラウチ氏の了解りょうかいだと取ったらしい。杖つえを上げ、ウィンキーに向けて、ディゴリー氏が唱となえた。
「リナベイト! 蘇そ生せいせよ!」
ウィンキーが微かすかに動いた。大きな茶色の目が開き、寝ね呆ぼけたように二、三度瞬まばたきした。魔法使いたちが黙だまって見つめる中、ウィンキーはよろよろと身を起こした。ディゴリー氏の足に目を止め、ウィンキーはゆっくり、おずおずと目を上げ、ディゴリー氏の顔を見つめた。それから、さらにゆっくりと、空を見上げた。巨大な、ガラス玉のようなウィンキーの両目に、空の髑どく髏ろが一つずつ映るのを、ハリーは見た。ウィンキーはハッと息を呑のみ、狂ったようにあたりを見回した。空地に詰めかけた大勢の魔法使いを見て、ウィンキーは怯おびえたように突然すすり泣きはじめた。
「しもべ!」ディゴリー氏が厳きびしい口調で言った。
「わたしが誰だか知っているか? 『魔ま法ほう生せい物ぶつ規き制せい管かん理り部ぶ』の者だ!」
ウィンキーは座ったまま、体を前後に揺ゆすりはじめ、ハッハッと激はげしい息いき遣づかいになった。ハリーは、ドビーが命令に従わなかったときの怯えた様子を、いやでも思い出した。
「見てのとおり、しもべよ、いましがた『闇やみの印しるし』が打ち上げられた」ディゴリー氏が言った。
「そして、おまえは、その直後に印の真下で発見されたのだ! 申し開きがあるか!」
「あ――あ――あたしはなさっていませんです!」ウィンキーは息を呑んだ。
「あたしはやり方をご存知ないでございます!」
「おまえが見つかったとき、杖を手に持っていた!」
ディゴリー氏はウィンキーの目の前で杖を振り回しながら吠ほえた。浮かぶ髑髏からの緑色の光が空地を照らし、その明かりが杖に当たったとき、ハリーははっと気がついた。
「あれっ――それ、僕のだ!」
空地の目がいっせいにハリーを見た。