「まあ、すぐにわかることだ」
ディゴリー氏は、そんなことはどうでもよいというように唸うなった。
「杖が最後にどんな術じゅつを使ったのか、簡単にわかる方法がある。しもべ、そのことは知っていたか?」
ウィンキーは震ふるえながら、耳をパタパタさせて必死に首を横に振った。ディゴリー氏は再び杖を掲かかげ、自分の杖とハリーの杖の先をつき合わせた。
「プライオア・インカンタート! 直ちょく前ぜん呪じゅ文もん!」ディゴリー氏が吠ほえた。
杖の合わせ目から、蛇へびを舌のようにくねらせた巨大な髑どく髏ろが飛び出した。ハーマイオニーが恐怖に息を呑のむ音をハリーは聞いた。しかし、それは空中高く浮かぶ緑の髑髏の影にすぎなかった。灰色の濃こい煙でできているかのようだ。まるで呪文のゴーストだった。
「デリトリウス! 消えよ!」ディゴリー氏が叫ぶと、煙の髑髏はフッと消えた。
「さて」ディゴリー氏は、まだヒクヒクと震え続けているウィンキーを、勝ち誇ほこった容よう赦しゃない目で見下ろした。
「あたしはなさっていません!」
恐怖で目をグリグリ動かしながら、ウィンキーが甲高い声で言った。
「あたしは、けっして、けっして、やり方をご存知ありません! あたしはよいしもべ妖精さんです。杖つえはお使いになりません。杖の使い方をご存知ありません!」
「おまえは現げん行こう犯はんなのだ、しもべ!」ディゴリー氏が吠ほえた。「凶きょう器きの杖を手にしたまま捕まったのだ!」
「エイモス」ウィーズリーおじさんが声を大きくした。
「考えてもみたまえ……あの呪じゅ文もんが使える魔法使いはわずか一ひと握にぎりだ……ウィンキーがいったいどこでそれを習ったというのかね?」