クラウチ氏はウィンキーをじっと見返した。皺しわの一本一本がより深く刻きざまれ、どことはなしに顔つきが険けわしくなっていた。何の哀あわれみもない目つきだ。
「ウィンキーは今夜、私がとうていありえないと思っていた行動を取った」
クラウチ氏がゆっくりと言った。
「私はしもべに、テントにいるようにと言いつけた。トラブルの処理に出かける間、その場にいるように申し渡した。ところが、こやつは私に従わなかった。それは『洋よう服ふく』に値する」
「おやめください!」
ウィンキーはクラウチ氏の足あし下もとに身を投げ出して叫さけんだ。
「どうぞ、ご主人さま! 洋服だけは、洋服だけはおやめください!」
屋や敷しきしもべ妖よう精せいを自由の身にする唯ゆい一いつの方法は、ちゃんとした洋服をくれてやることだと、ハリーは知っていた。クラウチの足下でさめざめと泣きながら、キッチン・タオルにしがみついているウィンキーの姿は、見るからに哀れだった。
「でも、ウィンキーは怖こわがっていたわ!」
ハーマイオニーはクラウチ氏を睨にらみつけ、怒りをぶつけるように話した。
「あなたのしもべ妖精は高こう所しょ恐きょう怖ふ症しょうだわ。仮面をつけた魔法使いたちが、誰かを空中高く浮かせていたのよ! ウィンキーがそんな魔法使いたちの通り道から逃のがれたいって思うのは当然だわ!」
クラウチ氏は、磨みがきたてられた靴くつを汚す腐くさった汚お物ぶつでも見るような目で、足あし下もとのウィンキーを観察していたが、一歩退ひいて、ウィンキーに触ふれられないようにした。
「私の命令に逆さからうしもべに用はない」クラウチ氏はハーマイオニーを見ながら冷たく言い放った。「主人や主人の名めい誉よへの忠誠ちゅうせいを忘れるようなしもべに、用はない」