「ねえ、誰か、あの髑どく髏ろみたいなのが何なのか、教えてくれないかな?」
ロンが待ちきれないように言った。
「別にあれが悪さをしたわけでもないのに……なんで大騒ぎするの?」
「言ったでしょ。ロン、あれは『例のあの人』の印よ」真っ先にハーマイオニーが答えた。
「私、『闇やみの魔ま術じゅつの興こう亡ぼう』で読んだわ」
「それに、この十三年間、一度も現れなかったのだ」ウィーズリーおじさんが静かに言った。
「みんなが恐怖に駆られるのは当然だ……戻ってきた『例のあの人』を見たも同然だからね」
「よくわかんないな」ロンが眉まゆをしかめた。「だって……あれはただ、空に浮かんだ形にすぎないのに……」
「ロン、『例のあの人』も、その家来も、誰かを殺すときに、決まってあの『闇やみの印しるし』を空に打ち上げたのだ」おじさんが言った。「それがどんなに恐怖を掻かき立てたか……若いおまえたちには、あのころのことはわかるまい。想像してごらん。帰宅して、自分の家の上に『闇の印』が浮かんでいるのを見つけたら、家の中で何が起きているかわかる……」
おじさんはブルッと身み震ぶるいした。
「誰だって、それは最悪の恐怖だ……最悪も最悪……」
一瞬いっしゅんみながしんとなった。
ビルが腕のシーツを取り、傷きずの具合を確かめながら言った。
「まあ、誰が打ち上げたかは知らないが、今夜は僕たちのためにはならなかったな。『死喰い人デス・イーター』たちがあれを見たとたん、怖こわがって逃げてしまった。誰かの仮面を引っぺがしてやろうとしても、そこまで近づかないうちにみんな『姿すがたくらまし』してしまった。ただ、ロバーツ家の人たちが地面にぶつかる前に受け取めることはできたけどね。あの人たちはいま、記き憶おく修しゅう正せいを受けているところだ」