「たかが夢だろ」ロンが励はげますように言った。「ただの悪い夢さ」
「ウン、だけど、ほんとにそうなのかな?」
ハリーは窓のほうを向いて、明け染そめてゆく空を見た。
「何だか変だと思わないか……僕の傷が痛んだ。その三日後に『死し喰くい人びと』の行進。そしてヴォルデモートの印がまた空に上がった」
「あいつの――名前を――言っちゃ――ダメ!」ロンは歯を食いしばったまま言った。
「それに、トレローニー先生が言ったこと、覚えてるだろ?」ハリーはロンの言ったことを聞き流して言葉を続けた。「先学期末だったね?」
トレローニー先生はホグワーツの「占うらない学がく」の先生だ。
ハーマイオニーの顔から恐怖が吹き飛び、フンと嘲あざけるように鼻を鳴らした。
「まあ、ハリー、あんなインチキさんの言うことを真まに受けてるんじゃないでしょうね?」
「君はあの場にいなかったから」ハリーが言った。「先生の声を聞いちゃいないんだ。あのときだけはいつもと違ってた。言ったよね、霊れい媒ばい状じょう態たいだったって――本物の。『闇やみの帝てい王おう』は再び立ち上がるであろうって、そう言ったんだ……以前よりさらに偉大に、より恐ろしく……召めし使つかいがあいつの下もとに戻るから、その手を借りて立ち上がるって……その夜にワームテールが逃げ去ったんだ」
沈ちん黙もくが流れた。ロンは無意識にチャドリー・キャノンズを描いたベッドカバーの穴を指でほじくっていた。
「ハリー、どうしてヘドウィグが来たかって聞いたの?」ハーマイオニーが聞いた。「手紙を待ってるの?」
「傷きず痕あとのこと、シリウスに知らせたのさ」ハリーはちょっと肩をすくめた。「返事を待ってるんだ」
「そりゃ、いいや!」ロンの表情が明るくなった。「シリウスなら、どうしたらいいかきっと知ってると思うよ!」
「早く返事をくれればいいなって思ったんだ」ハリーが言った。