ウィーズリーおばさんは部屋の隅すみの大きな柱時計をちらっと見た。ハリーはこの時計が好きだった。時間を知るにはまったく役に立たなかったが、それ以外ならとてもいろいろなことがわかる。金色の針が九本、それぞれに家族の名前が彫ほり込まれている。文も字じ盤ばんには数字はなく、家族全員がいそうな場所が書いてあった。「家」「学校」「仕事」はもちろん、「迷子」「病院」「牢ろう獄ごく」などもあったし、普通の時計の十二時の位置には、「命が危ない」と書いてある。
八本の針がいまは「家」の位置を指していた。しかし、いちばん長いおじさんの針は、まだ「仕事」を指していた。おばさんがため息をついた。
「お父様が週末にお仕事にお出かけになるのは、『例のあの人』のとき以来のことだわ」おばさんが言った。「お役所はあの人を働かせすぎるわ。早くお帰りにならないと、夕食が台だい無なしになってしまう」
「でも、父さんは、ワールドカップのときのミスを埋め合わせなければ、と思っているのでしょう?」パーシーが言った。「ほんとうのことを言うと、公おおやけの発表をする前に、部の上じょう司しの許可を取りつけなかったのは、ちょっと軽けい率そつだったと――」
「あのスキーターみたいな卑ひ劣れつな女が書いたことで、お父様を責めるのはおやめ!」
ウィーズリーおばさんがたちまちメラメラとなった。
「父さんが何にも言わなかったら、あのリータのことだから、魔ま法ほう省しょうの誰も何もコメントしないのはけしからんとか、どうせそんなことを言ったろうよ」ロンとチェスをしていたビルが言った。「リータ・スキーターってやつは、誰でもこき下ろすんだ。グリンゴッツの呪のろい破り職しょく員いんを全員インタビューした記事、覚えてるだろう? 僕のこと、『長髪ちょうはつのアホ』って呼んだんだぜ」
「ねえ、おまえ、たしかに長すぎるわよ」おばさんがやさしく言った。
「ちょっと私に切――」
「ダメ、ママ」