「あら、お父様のお帰りよ!」
もう一度時計を見たおばさんが、突然言った。
ウィーズリーおじさんの針が「仕事」から「移動中」になっていた。一いっ瞬しゅん後のちに、針はプルプルと震ふるえて、みんなの針のある「家」のところで止まり、キッチンからおじさんの呼ぶ声が聞こえてきた。
「いま行くわ、アーサー!」おばさんが慌あわてて部屋を出ていった。
数分後、夕食を盆ぼんに載のせて、おじさんが暖かな居間に入ってきた。疲れきった様子だ。
「まったく、火に油を注ぐとはこのことだ」
暖だん炉ろのそばの肘ひじ掛かけ椅い子すに座り、少し萎しなびたカリフラワーを食べるともなく突っつき回しながら、ウィーズリーおじさんがおばさんに話しかけた。
「リータ・スキーターが、他にも魔ま法ほう省しょうのゴタゴタがないかと、この一週間ずっと嗅かぎ回って記事のネタ探しをしていたんだが、とうとう嗅ぎつけた。あの憐あわれなバーサの行方不明事件を。明日の『日にっ刊かん予よ言げん者しゃ新しん聞ぶん』のトップ記事になるだろう。とっくに誰かを派は遣けんしてバーサの捜そう索さくをやっていなければならんと、バグマンにちゃんと言っといたのに、言わんこっちゃない」
「クラウチさんなんか、もう何週間も前からそう言い続けていましたよ」
パーシーがすばやく言った。
「クラウチは運がいい。リータがウィンキーのことを嗅かぎつけなかったからね」
おじさんがイライラしながら言った。
「『クラウチ家のしもべ妖よう精せい、『闇やみの印しるし』を創つくり出した杖つえを持って逮たい捕ほさる』なんて、まる一週間大見出しになるところだったよ」
「あのしもべは、たしかに無責任だったけれど、あの印を創り出しはしなかったって、みんな了解ずみじゃなかったのですか?」パーシーも熱くなった。
「私に言わせれば、屋や敷しき妖精たちにどんなにひどい仕打ちをしているのかを、『日刊予言者新聞』の誰にも知られなくて、クラウチさんは大変運が強いわ!」ハーマイオニーが憤ふん慨がいした。
「わかってないね、ハーマイオニー!」パーシーが言った。「クラウチさんくらいの政府高官になると、自分の召めし使つかいに揺ゆるぎない恭きょう順じゅんを要求して当然なんだ」
「あの人の奴ど隷れいって言うべきだわ!」ハーマイオニーの声が熱くなって上ずった。
「だって、あの人はウィンキーにお給料払ってないもの。でしょ?」
「みんな、もう部屋に上がって、ちゃんと荷造りしたかどうか確かめなさい!」
おばさんが議ぎ論ろんに割って入った。
「ほらほら、早く、みんな……」