ハリーは箒ほうき磨みがきセットを片づけ、ファイアボルトを担かつぎ、ロンと一いっ緒しょに階段を上った。家の最上階では雨音がいっそう激はげしく響ひびき、それにヒューヒューと風が鳴き唸うなる音、その上、屋や根ね裏うらに棲すむグールお化けの喚わめき声がときどき加わった。二人が部屋に入っていくと、ピッグウィジョンがまたピーピー鳴き、籠かごの中をビュンビュン飛び回りはじめた。荷造り途と中ちゅうのトランクを見て狂ったように興こう奮ふんしたらしい。
「『ふくろうフーズ』を投げてやって」ロンが一袋ひとふくろハリーに投げてよこした。「それで黙だまるかもしれない」
ハリーは、「ふくろうフーズ」を二、三個、ピッグウィジョンの鳥籠の格こう子しの間から差し入れ、自分のトランクを見た。トランクの隣となりにヘドウィグの籠があったが、まだ空からのままだった。
「一週間以上たった」
ヘドウィグのいない止まり木を見ながらハリーが言った。
「ロン、シリウスが捕まったなんてこと、ないよね?」
「ないさぁ。それだったら『日にっ刊かん予よ言げん者しゃ新しん聞ぶん』に載のるよ」ロンが言った。
「魔ま法ほう省しょうが、とにかく誰かを逮たい捕ほしたって、見せびらかしたいはずだもの。そうだろ?」
「ウン、そうだと思うけど……」
「ほら、これ、ママがダイアゴン横丁よこちょうで君のために買ってきた物だよ。それに、君の金庫から金貨を少し下ろしてきた……君の靴くつ下したも全部洗せん濯たくしてある」
ロンが山のような買い物包みを、ハリーの折おり畳たたみベッドにドサリと下ろし、その脇わきに金貨の入った巾着きんちゃくと、靴くつ下したを一ひと抱かかえドンと置いた。ハリーは包みを解ほどきはじめた。ミランダ・ゴズホーク著「基き本ほん呪じゅ文もん集しゅう・四学年用」のほか、新しい羽根ペンを一ひと揃そろい、羊よう皮ひ紙しの巻まき紙がみを一ダース、魔ま法ほう薬やく調合ちょうごう材料セットの補ほ充じゅう品ひん――ミノカサゴの棘とげや鎮ちん痛つう剤ざいのベラドンナエキスが足りなくなっていたので――などなどだった。大おお鍋なべに下着を詰め込んでいたとき、ロンが背はい後ごでいかにもいやそうな声を上げた。