「それで、侵入者はどうなった?」
「アーサー、あのマッド‐アイの言いそうなことじゃないか」ディゴリー氏の首がまた目をぐるぐるさせながら言った。「真夜中に、誰かがマッド‐アイの庭に忍び込んだって? ショックを受けた猫かなんかが、ジャガイモの皮だらけになってうろついているのが見つかるくらいが関せきの山だろうよ。しかし、『魔ま法ほう不ふ適てき正せい使し用よう取とり締しまり局きょく』がマッド‐アイを捕まえたらおしまいだ――なにしろああいう前ぜん歴れきだし――なんとか軽い罪で放ほう免めんしなきゃならん。君の管かん轄かつの部あたりで――爆発するゴミバケツの罪はどのくらいかね?」
「警けい告こく程度だろう」
ウィーズリーおじさんは、眉まゆ根ねに皺しわをよせて、忙いそがしくメモを取り続けていた。
「マッド‐アイは杖つえを使わなかったのだね? 誰かを襲おそったりはしなかったね?」
「あいつは、きっとベッドから飛び起きて、窓から届く範はん囲いの物に、手当たりしだい呪のろいをかけたに違いない」ディゴリー氏が言った。「しかし、『不適正使用取締局』がそれを証明しょうめいするのがひと苦労のはずだし、負ふ傷しょう者しゃはいない」
「わかった。行こう」ウィーズリーおじさんはそう言うと、メモ書きした羊よう皮ひ紙しをポケットに突っ込み、再びキッチンから飛び出していった。
ディゴリー氏の顔がウィーズリーおばさんのほうを向いた。
「モリー、すまんね」声が少し静かになった。「こんな朝早くからお煩わずらわせして……しかし、マッド‐アイを放免できるのはアーサーしかいない。それに、マッド‐アイは今日から新しい仕事に就つくことになっている。なんでよりによってその前の晩に……」
「エイモス、気にしないでちょうだい」おばさんが言った。「帰る前に、トーストか何か、少し召めし上がらない?」
「ああ、それじゃ、いただこうか」ディゴリー氏が言った。
おばさんはテーブルに重ねて置いてあったバターつきトーストを一枚取り、火ひ箸ばしで挟はさみ、ディゴリー氏の口に入れた。
「ふぁりがとう」
フガフガとお礼を言い、それからポンと軽い音を立てて、ディゴリー氏の首は消えた。