おじさんが慌あわただしくビル、チャーリー、パーシーと二人の女の子にさよならを言う声がハリーの耳に聞こえてきた。五分もたたないうちに、こんどはローブの前後を間違えずに着て、髪かみを梳とかしつけながら、おじさんがキッチンに戻ってきた。
「急いで行かないと――みんな、元気で新学期を過ごすんだよ」おじさんはマントを肩にかけ、『姿すがたくらまし』の準備をしながら、ハリー、ロン、双ふた子ごの兄弟に呼びかけた。
「母さん、子供たちをキングズ・クロスに連れていけるね?」
「もちろんですよ。あなたはマッド‐アイの面倒だけ見てあげて。私たちは大丈夫だから」
おじさんが消えたのと入れ替かわりに、ビルとチャーリーがキッチンに入ってきた。
「誰かマッド‐アイって言った?」ビルが聞いた。「あの人、こんどは何をしでかしたんだい?」
「昨日きのうの夜、誰かが家に押し入ろうとしたって、マッド‐アイがそう言ったんですって」おばさんが答えた。
「マッド‐アイ・ムーディ?」トーストにマーマレードを塗ぬりながら、ジョージがちょっと考え込んだ。「あの変人の――」
「お父様はマッド‐アイ・ムーディを高く評価してらっしゃるわ」おばさんが厳きびしくたしなめた。
「ああ、うん。パパは電気のプラグなんか集めてるしな。そうだろ?」おばさんが部屋を出た隙すきにフレッドが声をひそめて言った。「似たもの同士さ……」
「往おう年ねんのムーディは偉大な魔法使いだった」ビルが言った。
「たしか、ダンブルドアとは旧きゅう知ちの仲だったんじゃないか?」チャーリーが言った。
「でも、ダンブルドアもいわゆる『まとも』な口くちじゃないだろ?」フレッドが言った。「そりゃ、あの人はたしかに天才さ。だけど……」
「マッド‐アイって、誰?」ハリーが聞いた。