ハリーはおばさんに理由を言う気になれなかったが、マグルのタクシー運転手は、興こう奮ふん状態のふくろうを運ぶことなんてめったにないし、それに、ピッグウィジョンが耳を劈つんざくような声で騒いでいたのだ。さらに悪いことに、「ドクター・フィリバスターの長なが々なが花はな火び――火なしで火がつくヒヤヒヤ花火」が、フレッドのトランクがぱっくり口を開けたとたんに炸さく裂れつし、クルックシャンクスが爪つめを立てて運転手の足にかじりついたものだから、運んでいた運転手は驚くやら、痛いやらで悲ひ鳴めいを上げた。
快適な旅とはいえなかった。みんなタクシーの座席にトランクと一いっ緒しょにぎゅうぎゅう詰めだった。クルックシャンクスは花火のショックからなかなか立ち直れなかったらしく、ロンドンに入るころまでには、ハリーも、ロンも、ハーマイオニーもいやというほどひっかかれていた。キングズ・クロス駅でタクシーを降りたときは、雨あま足あしがいっそう強くなっていた。交通の激はげしい道を横切ってトランクを駅の構内に運び込む間に、ビショ濡ぬれになったにもかかわらず、みんなほっとしていた。
ハリーはもう9と4分の3番線への行き方に慣れてきていた。9番線と10番線の間にある、一いっ見けん堅かたそうに見える柵さくを、まっすぐ突き抜けて歩くだけの簡単なことだった。唯ゆい一いつ厄やっ介かいなのは、マグルに気づかれないように、何気なくやり遂とげなければならないことだった。今日は何組かに分かれて行くことにした。ハリー、ロン、ハーマイオニー組(なにしろピッグウィジョンとクルックシャンクスがお供なのでいちばん目立つグループ)が最初だ。三人は何気なくおしゃべりをしているふりをして柵に寄り掛かかり、するりと横向きで入り込んだ……とたんに9と4分の3番線ホームが目の前に現れた。
紅くれないに輝かがやく蒸じょう気き機き関かん車しゃホグワーツ特急は、もう入線していた。吐はき出す白い煙の向こう側に、ホグワーツの学生や親たちが大勢、黒いゴーストのような影になって見えた。ピッグウィジョンは、霞かすみのかなたから聞こえるホーホーというたくさんのふくろうの鳴き声につられて、ますますうるさく鳴いた。ハリー、ロン、ハーマイオニーは席探しを始めた。まもなく列車の中ほどに空あいたコンパートメントを見つけ、荷物を入れた。それからホームにもう一度飛び降り、ウィーズリーおばさん、ビル、チャーリーにお別れを言った。