「マルフォイ、君を招まねいた覚えはない」ハリーが冷ややかに言った。
「ウィーズリー……何だい、そいつは?」マルフォイはピッグウィジョンの籠かごを指差した。ロンのドレスローブの袖そでが籠からぶら下がり、列車が揺ゆれるたびにゆらゆらして、黴かびの生はえたようなレースがいかにも目立った。
ロンはローブを見えないように隠そうとしたが、マルフォイのほうが早かった。袖そでをつかんで引っ張った。
「これを見ろよ!」マルフォイがロンのローブを吊つるし上げ、狂きょう喜きしてクラッブとゴイルに見せた。「ウィーズリー、こんなのをほんとうに着るつもりじゃないだろうな? 言っとくけど――一八九〇年代に流行した代しろ物ものだ……」
「糞くそ食らえ!」ロンはローブと同じ顔色になって、マルフォイの手からローブをひったくった。マルフォイが高々と嘲あざ笑わらい、クラッブとゴイルはバカ笑いした。
「それで……エントリーするのか、ウィーズリー? がんばって少しは家か名めいを上げてみるか? 賞金しょうきんもかかっているしねぇ……勝てば少しはましなローブが買えるだろうよ……」
「何を言ってるんだ?」ロンが噛かみついた。
「エントリーするのかい?」マルフォイが繰り返した。
「君はするだろうねぇ、ポッター。見せびらかすチャンスは逃のがさない君のことだし?」
「何が言いたいのか、はっきりしなさい。じゃなきゃ出ていってよ、マルフォイ」
ハーマイオニーが「基き本ほん呪じゅ文もん集しゅう・四学年用」の上に顔を出し、つっけんどんに言った。
マルフォイの青白い顔に、得意げな笑みが広がった。
「まさか、君たちは知らないとでも?」マルフォイはうれしそうに言った。「父親も兄あに貴きも魔ま法ほう省しょうにいるのに、まるで知らないのか? 驚いたね。父上なんか、もうとっくに僕に教えてくれたのに……コーネリウス・ファッジから聞いたんだ。しかし、まあ、父上はいつも魔法省の高官とつき合ってるし……たぶん、君の父親は、ウィーズリー、下したっ端ぱだから知らないのかもしれないな……そうだ……おそらく、君の父親の前では重要事項は話さないのだろう……」
もう一度高笑いすると、マルフォイはクラッブとゴイルに合図して、三人ともコンパートメントを出ていった。