ロンが立ち上がってドアを力まかせに閉め、その勢いでガラスが割れた。
「ロンったら!」ハーマイオニーが咎とがめるような声を上げ、杖つえを取り出して「レパロ! 直せ!」と唱となえた。粉こな々ごなのガラスの破は片へんが飛び上がって一枚のガラスになり、ドアの枠わくにはまった。
「フン……やつは何でも知ってて、僕たちは何にも知らないって、そう思わせてくれるじゃないか……」ロンが歯は噛がみした。「『父上はいつも魔法省の高官とつき合ってるし』……パパなんか、いつでも昇進しょうしんできるのに……いまの仕事が気に入ってるだけなんだ……」
「そのとおりだわ」ハーマイオニーが静かに言った。「マルフォイなんかの挑発ちょうはつに乗っちゃだめよ、ロン――」
「あいつが! 僕を挑発? ヘヘンだ!」ロンは残っている大おお鍋なべケーキを一つ摘つまみ上げ、つぶしてバラバラにした。
旅が終わるまでずっと、ロンの機き嫌げんは直らなかった。制服のローブに着き替がえるときもほとんどしゃべらず、ホグワーツ特急が速度を落としはじめても、ホグズミードの真っ暗な駅に停てい車しゃしても、まだしかめっ面だった。
デッキの戸が開いたとき、頭上で雷が鳴った。ハーマイオニーはクルックシャンクスをマントに包くるみ、ロンはドレスローブをピッグウィジョンの籠かごの上に置きっぱなしにして汽車を降りた。外は土ど砂しゃ降ぶりで、みんな背を丸め、目を細めた。まるで頭から冷水をバケツで何なん杯ばいも浴びせかけるように、雨は激はげしく叩たたきつけるように降ふっていた。
「やあ、ハグリッド!」ホームの向こう端はしに立つ巨大なシルエットを見つけて、ハリーが叫さけんだ。
「ハリー、元気かぁー?」ハグリッドも手を振って叫び返した。「歓迎会で会おう。みんな溺おぼれっちまわなかったらの話だがなぁー!」
一年生は伝でん統とうに従い、ハグリッドに引いん率そつされ、ボートで湖を渡ってホグワーツ城に入る。
「うぅぅぅ、こんなお天気のときに湖を渡るのはごめんだわ」人波に混じって暗いホームをのろのろ進みながら、ハーマイオニーは身み震ぶるいし、言葉には熱がこもった。
駅の外にはおよそ百台の馬なしの馬車が待っていた。ハリー、ロン、ハーマイオニー、ネビルは、一いっ緒しょにそのうちの一台に、感かん謝しゃしながら乗り込んだ。ドアがピシャッと閉まり、まもなくゴトンと大きく揺ゆれて動き出し、馬なし馬車の長い行列が、雨水を撥はね飛ばしながら、ガラガラと進んだ。ホグワーツ城をめざして。