羽の生えたイノシシの像が両脇りょうわきに並ぶ校門を通り、大きくカーブする城への道を、馬車はゴトゴトと進んだ。風雨は見る見る嵐になり、馬車は危なっかしく左右に揺ゆれた。ハリーは窓に寄り掛かかり、だんだん近づいてくるホグワーツ城を見ていた。明かりの点ともった無数の窓が、厚い雨のカーテンの向こうでぼんやり霞かすみ、瞬またたいていた。正面玄げん関かんのがっしりした樫かしの扉とびらへと上る石段の前で馬車が止まったちょうどそのとき、稲いな妻ずまが空を走った。前の馬車に乗っていた生徒たちは、もう急ぎ足で石段を上り、城の中へと向かっていた。ハリー、ロン、ハーマイオニー、ネビルも馬車を飛び降り、石段を一いち目もく散さんに駆かけ上がった。四人がやっと顔を上げたのは、無事に玄関の中に入ってからだった。松たい明まつに照らされた玄関ホールは、広々とした大だい洞どう窟くつのようで、大だい理り石せきの壮そう大だいな階段へと続いている。
「ひでぇ」ロンは頭をブルブルッと振るい、そこいらじゅうに水を撒まき散らした。
「この調子で降ふると、湖が溢あふれるぜ。僕、ビショ濡ぬれ――うわーっ!」
大きな赤い水風船が天井からロンの頭に落ちて割れた。ぐしょ濡れで水をピシャピシャ撥はね飛ばしながら、ロンは横にいたハリーのほうによろけた。そのとき、二発目の水風船が落ちてきた――それは、ハーマイオニーをかすめて、ハリーの足あし下もとで破は裂れつした。ハリーのスニーカーも靴くつ下したも、どっと冷たい水しぶきを浴びた。周りの生徒たちは、悲ひ鳴めいを上げて水爆弾戦線から離れようと押し合いへし合いした――ハリーが見上げると、四、五メートル上のほうに、ポルターガイストのピーブズがプカプカ浮かんでいた。鈴のついた帽ぼう子しに、オレンジ色の蝶ちょうネクタイ姿の小男が、性悪しょうわるそうな大きな顔をしかめて、次の標的ひょうてきに狙いを定めている。
第12章 三强争霸赛