「『闇やみの魔ま術じゅつに対する防ぼう衛えい術じゅつ』の新しい先生はどこかしら?」ハーマイオニーも教職員テーブルを見ていた。
「闇の魔術に対する防衛術」の先生は、三学期、つまり一年以上長く続いた例ためしがない。ハリーが他の誰よりも好きだったルーピン先生は、去年辞じ職しょくしてしまった。ハリーは教職員テーブルを端はしから端まで眺ながめたが、新顔はまったくいない。
「たぶん、誰も見つからなかったのよ!」ハーマイオニーが心配そうに言った。
ハリーはもう一度しっかりテーブルを見直した。「呪じゅ文もん学がく」の、ちっちゃいフリットウィック先生は、クッションを何枚も重ねた上に座っていた。その横が「薬やく草そう学がく」のスプラウト先生で、バサバサの白しら髪が頭から帽ぼう子しがずり落ちかけている。彼女が話しかけているのが「天てん文もん学がく」のシニストラ先生で、シニストラ先生の向こう隣どなりは、土つち気け色いろの顔、鉤かぎ鼻ばな、べっとりした髪かみ、「魔ま法ほう薬やく学がく」のスネイプ――ハリーがホグワーツでいちばん嫌いな人物だ。ハリーがスネイプを嫌っているのに負けず劣らず、スネイプもハリーを憎んでいた。去年、スネイプの鼻先(しかも大きな鼻)からシリウスを逃がすのにハリーが手を貸したことで、これ以上強くなりようがないはずのスネイプの憎しみが、ますますひどくなった――スネイプとシリウスは学生時代からの宿敵しゅくてきだったのだ。
スネイプの向こう側に空席があったが、ハリーはマクゴナガル先生の席だろうと思った。その隣がテーブルの真ん中で、ダンブルドア校長が座っていた。流れるような銀ぎん髪ぱつと白しら鬚ひげが蝋ろう燭そくの明かりに輝かがやき、堂々とした深緑色のローブには星や月の刺し繍しゅうが施されている。ダンブルドア校長は、すらりと長い指の先を組み、その上に顎あごを載のせ、半月メガネの奥から天井を見上げて、何か物思いに耽ふけっているかのようだ。ハリーも天井を見上げた。天井は、魔法で本物の空と同じに見えるようになっているが、こんなにひどい荒れ模も様ようの天井は初めてだ。黒と紫の暗あん雲うんが渦うず巻まき、外でまた雷らい鳴めいが響ひびいたとたん、天井に樹きの枝のような形の稲いな妻ずまが走った。