「『闇やみの魔ま術じゅつに対する防ぼう衛えい術じゅつ』の新しい先生をご紹介しょうかいしよう」静まり返った中でダンブルドアの明るい声が言った。「ムーディ先生です」
新任の先生は拍手で迎えられるのが普通だったが、ダンブルドアとハグリッド以外は職員も生徒も誰一人として拍手しなかった。二人の拍手が、静寂せいじゃくの中でパラパラと寂さびしく鳴り響ひびき、その拍手もほとんどすぐにやんだ。ほかの全員は、ムーディのあまりに不気味なありさまに呪じゅ縛ばくされたかのように、ただじっと見つめるばかりだった。
「ムーディ?」ハリーが小声でロンに話しかけた。「マッド‐アイ・ムーディ? 君のパパが今朝助けにいった人?」
「そうだろうな」ロンも圧倒されたように、低い声で答えた。
「あの人、いったいどうしたのかしら?」ハーマイオニーも囁ささやいた。「あの顔、何があったの?」
「知らない」ロンは、ムーディに魅み入いられたように見つめながら、囁き返した。
ムーディは、お世せ辞じにも温かいとはいえない歓迎ぶりにも、まったく無む頓とん着ちゃくのようだった。目の前のかぼちゃジュースのジャーには目もくれず、旅行用マントからこんどは携けい帯たい用よう酒さか瓶びんを引っ張り出してグビッグビッと飲んだ。飲むときに腕が上がり、マントの裾すそが床から数センチ持ち上がった。ハリーは、先せん端たんに鉤かぎ爪づめのついた木製の義ぎ足そくをテーブルの下から垣かい間ま見みた。
ダンブルドアが咳せき払ばらいした。
「先ほど言いかけていたのじゃが」身じろぎもせずにマッド‐アイ・ムーディを見つめ続けている生徒たちに向かって、ダンブルドアはにこやかに語りかけた。
「これから数ヵ月にわたり、我が校は、まことに心躍こころおどるイベントを主しゅ催さいするという光栄に浴よくする。この催もよおしはここ百年以上行われていない。この開催を発表するのは、わしとしても大いにうれしい。今年――ホグワーツで、三大魔法学校トライウィザード・対抗試合トーナメントを行う」
「ご冗談じょうだんでしょう!」フレッド・ウィーズリーが大声を上げた。
ムーディが到着とうちゃくしてからずっと大広間に張りつめていた緊張きんちょうが、急に解けた。ほとんど全員が笑い出し、ダンブルドアも絶妙ぜつみょうのかけ声を楽しむように、フォッフォッと笑った。