「ブボチューバー、腫はれ草ぐさです」スプラウト先生がきびきびと説明した。「搾しぼってやらないといけません。みんな、膿うみを集めて――」
「えっ、なにを?」シェーマス・フィネガンが気き色しょく悪そうに聞き返した。
「膿です。フィネガン、うみ」スプラウト先生が繰り返した。「しかもとても貴重なものですから、むだにしないよう。膿を、いいですか、この瓶びんに集めなさい。ドラゴン革がわの手袋をして。原げん液えきのままだと、このブボチューバーの膿は、皮ひ膚ふに変な害を与えることがあります」
膿搾しぼりはむかむかしたが、なんだか奇妙な満足感があった。腫れたところを突つくと、黄緑色のドロッとした膿がたっぷり溢あふれ出し、強烈な石せき油ゆ臭しゅうがした。先生に言われたとおり、それを瓶に集め、授業が終わるころには数リットルも溜たまった。
「マダム・ポンフリーがお喜びになるでしょう」最後の一本の瓶にコルクで栓せんをしながら、スプラウト先生が言った。「頑がん固こなニキビにすばらしい効き目があるのです。このブボチューバーの膿は。これで、ニキビをなくそうと躍やっ起きになって、生徒がとんでもない手段を取ることもなくなるでしょう」
「かわいそうなエロイーズ・ミジョンみたいにね」ハッフルパフ生のハンナ・アボットが声を殺して言った。「自分のニキビに呪のろいをかけて取ろうとしたっけ」
「バカなことを」スプラウト先生が首を振り振り言った。「ポンフリー先生が鼻を元通りにくっつけてくれたからよかったようなものの」
濡ぬれた校庭の向こうから鐘の音が響ひびいてきた。授業の終りを告げる城の鐘だ。「薬やく草そう学がく」が終わり、ハッフルパフ生は石段を上って「変へん身しん術じゅつ」の授業へ、グリフィンドール生は反対に芝しば生ふを下って、「禁じられた森」のはずれに建つハグリッドの小屋へと向かった。