先生の声がぐっと低くなり、最後はほとんど囁ささやくように言った。ロンはやれやれという目つきでハリーを見た。ハリーは硬かたい表情のままロンを見た。トレローニー先生は二人のそばをスイーッと通り、暖炉前に置かれたヘッドレストのついた大きな肘ひじ掛かけ椅い子すに座り、生徒たちと向かい合った。トレローニー先生を崇すう拝はいするラベンダー・ブラウンとパーバティ・パチルは、先生のすぐそばのクッション椅子に座っていた。
「みなさま、星を学ぶときが来ました」先生が言った。
「惑わく星せいの動き、そして天体の舞まいのステップを読み取る者だけに明かされる神しん秘ぴ的てき予よ兆ちょう。人の運命は、惑星の光によって、その謎なぞが解き明かされ、その光は混まじり合い……」
ハリーはほかのことを考えていた。香こうを焚たき込めた暖炉の火で、いつも眠くなりボーッとなるのだ。しかもトレローニー先生の占いに関する取り止めのない話は、ハリーを夢中にさせた例ためしがない――それでも先生がたったいま言ったことが、ハリーの頭に引っかかっていた。
「あなたの恐れていることは、かわいそうに、必ず起こるでしょう……」
まったくハーマイオニーの言うとおりだ、とハリーはイライラしながら考えた。トレローニー先生はインチキだ。ハリーはいま、何も恐れてはいなかった……まあ、強しいて言えば、シリウスが捕まってしまったのではないか、と恐れてはいたが……とはいえ、トレローニーに何がわかるというのか? トレローニー先生の占いなんて、当たればおなぐさみの当て推量ずいりょうで、何となく不気味な雰ふん囲い気きだけのものだと、ハリーはとっくにそういう結論を出していた。
ただし、例外は、先学期末のことだった。ヴォルデモートが再び立ち上がると予言した……ダンブルドアでさえ、ハリーの話を聞いたとき、あの恍こう惚こつ状じょう態たいは本物だと考えた。