玄関ホールの全員が、いまや耳を傾けている。マルフォイは、これみよがしに新聞を広げ直した。
アーノルド・ウィーズリーは、二年前にも空飛ぶ車を所有していたことで責任を問われたが、昨日、非常に攻こう撃げき的てきなゴミバケツ数個をめぐって、マグルの法ほう執しっ行こう官かん(「警察」)と揉もめ事を起こした。ウィーズリー氏は、「マッド‐アイ」ムーディの救助に駆かけつけた模様だ。年老いた「マッド‐アイ」は、友好的握あく手しゅと殺人未み遂すいとの区別もつかなくなった時点で魔法省を引退した往おう年ねんの「闇やみ祓ばらい」である。警けい戒かいの厳重げんじゅうなムーディ氏の自宅に到着とうちゃくしたウィーズリー氏は、案あんの定じょう、ムーディー氏がまたしても間違い警けい報ほうを発したことに気づいた。ウィーズリー氏はやむなく何人かの記き憶おく修しゅう正せいを行い、やっと警官の手を逃のがれたが、こんな顰蹙を買いかねない不ふ名めい誉よな場面に、なぜ魔法省が関かん与よしたのかという「日刊予言者新聞」の質問に対して、回答を拒こばんだ。
「写真まで載ってるぞ、ウィーズリー!」マルフォイが新聞を裏うら返がえして掲かかげて見せた。「君の両親が家の前で写ってる――もっとも、これが家と言えるかどうか! 君の母親は少し減量げんりょうしたほうがよくないか?」
ロンは怒りで震ふるえていた。みんながロンを見つめている。
「失うせろ、マルフォイ」ハリーが言った。「ロン、行こう……」
「そうだ、ポッター、君は夏休みにこの連中のところに泊まったそうだね?」マルフォイがせせら笑った。「それじゃ、教えてくれ。ロンの母親は、ほんとにこんなデブチンなのかい? それとも単に写真映りかねぇ?」
「マルフォイ、君の母親はどうなんだ?」ハリーが言い返した――ハリーもハーマイオニーも、ロンがマルフォイに飛びかからないように、ロンのローブの後ろをがっちり押さえていた。
「あの顔つきは何だい? 鼻の下に糞くそでもぶら下げているみたいだ。いつもあんな顔してるのかい? それとも単に君がぶら下がっていたからなのかい?」
マルフォイの青白い顔に赤味が差した。
「僕の母上を侮ぶ辱じょくするな、ポッター」
「それなら、その減らず口を閉じとけ」ハリーはそう言って背を向けた。
バーン!