数人が悲ひ鳴めいを上げた――ハリーは何か白熱した熱いものが頬ほおをかすめるのを感じた――ハリーはローブのポケットに手を突っ込んで杖つえを取ろうとした。しかし、杖に触ふれるより早く、二つ目のバーンだ。そして吠ほえ声が玄げん関かんホールに響ひびき渡った。
「若わか造ぞう、そんなことをするな!」
ハリーが急いで振り返ると、ムーディ先生が大だい理り石せきの階段をコツッ、コツッと下りてくるところだった。杖を上げて、まっすぐに純白じゅんぱくのケナガイタチに突きつけている。石畳いしだたみを敷しき詰めた床で、ちょうどマルフォイが立っていたあたりに、白イタチが震えていた。
玄関ホールに恐怖の沈ちん黙もくが流れた。ムーディ以外は身動き一つしない。ムーディがハリーを見た――少なくとも普通の目のほうはハリーを見た。もう一つの目はひっくり返って、頭の後ろのほうを見ているところだった。
「やられたかね?」ムーディが唸うなるように言った。低い、押し殺したような声だ。
「いいえ、はずれました」ハリーが答えた。
「触さわるな!」ムーディが叫さけんだ。
「触るなって――何に?」ハリーは面めん食くらった。
「おまえではない――あいつだ!」ムーディは親指で背はい後ごにいたクラッブをぐいと指し、唸った。白ケナガイタチを拾い上げようとしていたクラッブは、その場に凍こおりついた。ムーディの動く目は、どうやら魔力を持ち、自分の背後が見えるらしい。
ムーディはクラッブ、ゴイル、ケナガイタチのほうに向かって、足を引きずりながらまたコツッ、コツッと歩き出した。イタチはキーキーと怯おびえた声を出して、地ち下か牢ろうのほうにサッと逃げ出した。