「そうはさせんぞ!」ムーディが吠ほえ、杖つえを再びケナガイタチに向けた――イタチは空中に二、三メートル飛び上がり、バシッと床に落ち、反動でまた跳はね上がった。
「敵が後ろを見せたときに襲おそうやつは気にくわん」ムーディは低く唸うなり、ケナガイタチは何度も床にぶつかっては跳ね上がり、苦痛にキーキー鳴きながら、だんだん高く跳ねた。「鼻はな持もちならない、臆病おくびょうで、下げ劣れつな行為だ……」
ケナガイタチは脚や尻しっ尾ぽをばたつかせながら、なす術すべもなく跳ね上がり続けた。
「二度と――こんな――ことは――するな――」ムーディはイタチが石畳いしだたみにぶつかって跳ね上がるたびに、一語一語を打ち込んだ。
「ムーディ先生!」ショックを受けたような声がした。
マクゴナガル先生が、腕一杯に本を抱えて、大だい理り石せきの階段を下りてくるところだった。
「やあ、マクゴナガル先生」ムーディはイタチをますます高く跳ね飛ばしながら、落ち着いた声で挨あい拶さつした。
「な――何をなさっているのですか?」マクゴナガル先生は、空中に跳ね上がるイタチの動きを目で追いながら聞いた。
「教育だ」ムーディが言った。
「教――ムーディ、それは生徒なのですか?」叫さけぶような声とともに、マクゴナガル先生の腕から本がボロボロこぼれ落ちた。
「さよう!」とムーディ。
「そんな!」マクゴナガル先生はそう叫ぶと、階段を駆かけ下りながら杖を取り出した。次の瞬間しゅんかん、バシッと大きな音を立てて、ドラコ・マルフォイが再び姿を現した。いまや顔は燃えるように紅潮こうちょうし、滑なめらかなブロンドの髪かみがバラバラとその顔にかかり、床に這はいつくばっている。マルフォイは引きつった顔で立ち上がった。