「ムーディ、本校では、懲罰ちょうばつに変へん身しん術じゅつを使うことは絶対ありません!」マクゴナガル先生が困り果てたように言った。「ダンブルドア校長が、そうあなたにお話ししたはずですが?」
「そんな話をされたかもしれん、フム」ムーディはそんなことはどうでもよいというふうに顎あごを掻かいた。「しかし、わしの考えでは、一発厳きびしいショックで――」
「ムーディ! 本校では居い残のこり罰を与えるだけです! さもなければ、規則破りの生徒が属ぞくする寮の寮りょう監かんに話をします」
「それでは、そうするとしよう」ムーディはマルフォイを嫌けん悪おの眼まな差ざしで、はたと睨にらんだ。
マルフォイは痛みと屈辱くつじょくで薄うす青あおい目をまだ潤うるませてはいたが、ムーディを憎らしげに見上げ、何か呟つぶやいた。「父上」という言葉だけが聞き取れた。
「フン、そうかね?」ムーディは、コツッ、コツッと木製の義ぎ足そくの鈍にぶい音をホール中に響ひびかせて二、三歩前に出ると、静かに言った。「いいか、わしはおまえの親父おやじ殿どのを昔から知っているぞ……親おや父じに言っておけ。ムーディが息子から目を離さんぞ、とな……わしがそう言ったと伝えろ……さて、おまえの寮りょう監かんは、たしか、スネイプだったな?」
「そうです」マルフォイが悔くやしそうに言った。
「やつも古い知り合いだ」ムーディが唸うなるように言った。「懐なつかしのスネイプ殿と口をきくチャンスをずっと待っていた……来い。さあ……」
そしてムーディはマルフォイの二の腕をむんずとつかみ、地ち下か牢ろうへと引っ立てていった。
マクゴナガル先生は、しばらくの間、心配そうに二人の後ろ姿を見送っていたが、やがて落ちた本に向かって杖つえを一ひと振ふりした。本は宙に浮かび上がり、先生の腕の中に戻った。