「では――すぐ取りかかる。呪いだ。呪いは力も形もさまざまだ。さて、魔ま法ほう省しょうによれば、わしが教えるべきは反はん対たい呪じゅ文もんであり、そこまでで終わりだ。違い法ほうとされる闇の呪文がどんなものか、六年生になるまでは生徒に見せてはいかんことになっている。おまえたちは幼すぎ、呪文を見ることさえ堪たえられぬ、というわけだ。しかしダンブルドア校長は、おまえたちの根性をもっと高く評価しておられる。校長はおまえたちが堪えられるとお考えだし、わしに言わせれば、戦うべき相手は早く知れば知るほどよい。見たこともないものから、どうやって身を護まもるというのだ? いましも違法な呪いをかけようとする魔法使いが、これからこういう呪文をかけますなどと教えてはくれまい。面と向かって、やさしく礼れい儀ぎ正しく闇の呪文をかけてくれたりはせん。おまえたちのほうに備えがなければならん。緊張きんちょうし、警けい戒かいしていなければならんのだ。いいか、ミス・ブラウン、わしが話しているときは、そんな物はしまっておかねばならんのだ」
ラベンダー・ブラウンは跳び上がって真っ赤になった。完成した自分の天てん宮きゅう図ずを、パーバティに机の下で見せていたところだったのだ。ムーディの「魔法の目」は、自分の背はい後ごが見えるだけでなく、どうやら堅かたい木も透すかして見ることができるらしい。
「さて……魔法法律により、最も厳きびしく罰ばっせられる呪じゅ文もんが何か、知っている者はいるか?」
何人かが中ちゅう途と半はん端ぱに手を挙げた。ロンもハーマイオニーも手を挙げていた。ムーディはロンを指しながらも、「魔法の目」はまだラベンダーを見み据すえていた。
「えーと」ロンは自信なげに答えた。「パパが一つ話してくれたんですけど……たしか『服従ふくじゅうの呪文』とか何とか?」
「ああ、そのとおりだ」ムーディが誉ほめるように言った。「おまえの父てて親おやなら、たしかにそいつを知っているはずだ。一時期、魔ま法ほう省しょうをてこずらせたことがある。『服従の呪文』はな」