「早く」ハーマイオニーが緊張きんちょうした様子でハリーとロンを急せかした。
「また、図書室ってやつじゃないだろうな?」ロンが言った。
「違う」ハーマイオニーはぶっきらぼうにそう言うと、脇わき道みちの廊ろう下かを指差した。
「ネビルよ」
ネビルが、廊下の中ほどにぽつんと立っていた。ムーディが「磔はりつけの呪じゅ文もん」をやって見せたあのときのように、恐怖に満ちた目を見開いて、目の前の石いし壁かべを見つめている。
「ネビル?」ハーマイオニーがやさしく話しかけた。
ネビルが振り向いた。
「やあ」ネビルの声はいつもよりかなり上ずっていた。「おもしろい授業だったよね? 夕食の出し物は何かな。僕――僕、お腹がペコペコだ。君たちは?」
「ネビル、あなた、大丈夫?」ハーマイオニーが聞いた。
「ああ、うん。大丈夫だよ」ネビルは、やはり不自然に甲かん高だかい声で、ベラベラしゃべった。「とってもおもしろい夕食――じゃないや、授業だった――夕食の食い物は何だろう?」
ロンはギョッとしたような顔でハリーを見た。
「ネビル、いったい――?」
そのとき、背はい後ごで奇妙なコツッ、コツッという音がして、振り返るとムーディ先生が足を引きずりながらやってくるところだった。四人とも黙だまり込んで、不安げにムーディを見た。しかし、ムーディの声は、いつもの声よりずっと低く、やさしい唸うなり声だった。
「大丈夫だぞ、坊ぼう主ず」ネビルに向かってそう声をかけた。「わしの部屋に来るか? おいで……茶でも飲もう……」
ネビルはムーディと二人でお茶を飲むと考えただけで、もっと怖こわがっているように見えた。身動きもせず、しゃべりもしない。
ムーディは「魔法の目」をハリーに向けた。
「おまえは大丈夫だな? ポッター?」
「はい」ハリーは、ほとんど挑ちょう戦せん的てきに返事をした。