それから一時間、二人はでっち上げ運うん勢せいを(しかもますます悲ひ劇げき的てきに)書き続けた。周りの生徒たちが一人、二人と寝しん室しつに上がり、談だん話わ室しつはだんだん人ひと気けがなくなった。どこからかクルックシャンクスが現れ、二人のそばに来て、空あいている椅子にひらりと飛び上がり、謎なぞめいた表情でハリーの顔をじっと見た。なんだか、二人がまじめに宿題をやっていないと知ったら、ハーマイオニーがこんな顔をするだろうというような目つきだ。
ほかにまだ使っていない種類の不幸が何かないだろうかと考えながら、部屋を見回すと、フレッドとジョージがハリーの目に入った。壁かべ際ぎわに座り込み、額ひたいを寄せ合い、羽根ペンを持って、一枚の羊よう皮ひ紙しを前に、何かに夢中になっている。フレッドとジョージが隅すみに引っ込んで、静かに勉強しているなど、ありえないことだ。たいがい、何でもいいから、真っただ中で、みんなの注目を集めて騒ぐのが好きなのだ。羊皮紙一枚と取っ組んでいる姿は、何やら秘ひ密みつめいた匂においがした。ハリーは、「隠かくれ穴あな」で、やはり二人が座り込んで何か書いていた姿を思い出した。そのときは、ウィーズリーW・ウィザードW・ウィーズWの新しい注文書を作っているのだろうと思ったが、こんどはそうではなさそうだ。もしそうなら、リー・ジョーダンも悪いた戯ずらに一枚加わっていたに違いない。もしや、三さん校こう対たい抗こう試じ合あいに名乗りを上げることと関係があるのでは、とハリーは思った。
ハリーが見ていると、ジョージがフレッドに向かって首を横に振り、羽根ペンで何かを掻かき消し、何やら話している。ヒソヒソ声だが、それでも、ほとんど人ひと気けのない部屋ではよく聞こえてきた。
「だめだ……それじゃ、俺おれたちがやっこさんを非ひ難なんしてるみたいだ。もっと、慎重しんちょうにやらなきゃ……」
ジョージがふとこっちを見て、ハリーと目が合った。ハリーは曖あい昧まいに笑い、急いで運勢作業に戻った――ジョージに、盗ぬすみ聞きしていたようにとられたくなかった。それからまもなく、双ふた子ごは羊皮紙を巻き、「おやすみ」といって寝室に去った。