「中身は何?」ハリーが箱を指した。
「いまお聞きになるなんて、なんて間まがいいですこと」ロンを睨にらみつけながら、そう言うと、ハーマイオニーは蓋ふたを開け、中身を見せた。
箱の中には、色とりどりのバッジが五十個ほど入っていた。みんな同じ文字が書いてある。
「S・P・E・W」
「スピュー(反へ吐ど)?」ハリーはバッジを一個取り上げ、しげしげと見た。
「何に使うの?」
「スピュー(反吐)じゃないわ」ハーマイオニーがもどかしそうに言った。
「エス――ピー――イー――ダブリュー。つまり、エスは協会、ピーは振しん興こう、イーはしもべ妖よう精せい、ダブリューは福ふく祉しの頭文字。しもべ妖よう精せい福ふく祉し振しん興こう協きょう会かいよ」
「聞いたことないなあ」ロンが言った。
「当然よ」ハーマイオニーは威い勢せいよく言った。「私が始めたばかりです」
「へえ?」ロンがちょっと驚いたように言った。「メンバーは何人いるんだい?」
「そうね――お二人が入会すれば――三人」ハーマイオニーが言った。
「それじゃ、僕たちが『反吐』なんて書いたバッジを着けて歩き回ると思ってるわけ?」ロンが言った。
「エス――ピー――イー――ダブリュー!」ハーマイオニーが熱くなった。
「ほんとは『魔法生物仲間の目に余る虐待ぎゃくたいを阻そ止しし、その法的立場を変えるためのキャンペーン』とするつもりだったの。でも入りきらないでしょ。だから、そっちのほうは、われらが宣せん言げん文の見出しに持ってきたわ」
ハーマイオニーは羊よう皮ひ紙しの束たばを二人の目の前でひらひら振った。
「私、図書室で徹底的に調べたわ。小こ人びと妖よう精せいの奴ど隷れい制せい度どは、何世紀も前から続いてるの。これまで誰も何にもしなかったなんて、信じられないわ」