「シリウスに言うべきじゃなかった!」ハリーは激はげしい口調で言った。
「何を言い出すんだ!」ロンはびっくりして言った。
「手紙のせいで、シリウスは帰らなくちゃならないって思ったんだ!」
ハリーは、こんどはテーブルをこぶしで叩いたので、ヘドウィグはロンの椅子の背に止まり、怒ったようにホーと鳴いた。
「戻ってくるんだ。僕が危ないと思って! 僕は何でもないのに! それに、おまえにあげる物なんて、何にもないよ」
ねだるように嘴くちばしを鳴らしているヘドウィグに、ハリーはつっけんどんに言った。
「食べ物がほしかったら、ふくろう小屋に行けよ」
ヘドウィグは大いに傷きずついた目つきでハリーを見て、開け放した窓のほうへと飛び去ったが、行きがけに、広げた翼つばさでハリーの頭のあたりをピシャリと叩いた。
「ハリー」ハーマイオニーがなだめるような声で話しかけた。
「僕、寝る。またあした」ハリーは言葉少なに、それだけ言った。
二階の寝しん室しつでパジャマに着き替がえ、四本柱のベッドに入ってはみたものの、ハリーは疲れて眠るという状態とはほど遠かった。
シリウスが戻ってきて、捕まったら僕のせいだ。僕は、どうして黙だまっていられなかったのだろう。ほんの二、三秒の痛みだったのに、くだらないことをべらべらと……自分一人の胸にしまっておく分別があったなら……。
しばらくして、ロンが寝室に入ってくる気配がしたが、ハリーはロンに話しかけはしなかった。横たわったまま、ハリーはベッドの暗い天てん蓋がいを見つめていた。寝室は静寂せいじゃくそのものだった。
自分のことで、ここまで頭が一杯でなかったらハリーは気づいたはずだ。いつものネビルのいびきが聞こえないことに。眠れないのはハリーだけではなかったのだ。