ヘドウィグを起こして、ハリーのほうを向かせるのに、ずいぶんてこずった。なにしろヘドウィグは、止まり木の上でゴソゴソ動き、ハリーに尾っぽを向け続けるばかりだった。昨夜、ハリーが感かん謝しゃの礼を尽くさなかったことに、まだ腹を立てているのだ。しかたなくハリーが、ヘドウィグは疲れているだろうから、ロンに頼んでピッグウィジョンを貸してもらおうかなと仄ほのめかすと、ヘドウィグはやっと脚を突き出し、ハリーに手紙をくくりつけることを許した。
「きっとシリウスを見つけておくれ、いいね?」
ハリーは、ヘドウィグを腕に乗せ、壁かべの穴まで運びながら、背中を撫なでて頼んだ。
「吸きゅう魂こん鬼きより先に」
ヘドウィグはハリーの指を甘あま噛がみした。どうやら、いつもよりかなり強めの噛み方だったが、それでも、お任まかせくださいとばかりに、静かにホーと鳴いた。それから両の翼つばさを広げ、ヘドウィグは朝日に向かって飛んだ。その姿が見えなくなるまで見送りながら、ハリーは、いつもの不安感がまた胃袋を襲おそうのを感じた。シリウスから返事が来れば、きっと不安は和やわらぐだろうと信じていたのに。かえってひどくなるとは。
「ハリー、それって、嘘うそでしょう」
朝食のとき、ハーマイオニーとロンに打ち明けると、ハーマイオニーは厳きびしく言った。
「傷きず痕あとが痛んだのは、勘かん違ちがいじゃないわ。知ってるくせに」
「だからどうだって言うんだい?」ハリーが切り返した。「僕のせいでシリウスをアズカバンに逆戻りさせてなるもんか」
ハーマイオニーは、反論しようと口を開きかけた。
「やめろよ」ロンがぴしゃりと言った。ハーマイオニーは、このときばかりはロンの言うことを聞き、押し黙だまった。