「ムーディの言い方ときたら――」
一時間後、「闇やみの魔ま術じゅつに対する防ぼう衛えい術じゅつ」の教室からふらふらになって出てきたハリーが呟つぶやいた(ムーディは、ハリーの力量を発はっ揮きさせると言い張り、四回も続けて練習させ、ついにはハリーが完全に呪じゅ文もんを破るところまで続けさせた)。
「――まるで、僕たち全員が、いまにも襲おそわれるんじゃないかと思っちゃうよね」
「ウン、そのとおりだ」ロンは一歩おきにスキップしていた。ムーディは昼食時までには呪文の効果は消えると請うけ合ったのだが、ロンはハリーに比べてずっと、呪のろいに弱かったのだ。
「被ひ害がい妄もう想そうだよな……」
ロンは不安げにちらりと後ろを振り返り、ムーディが声の届く範はん囲いにいないことを確かめてから、話を続けた。
「魔ま法ほう省しょうが、ムーディがいなくなって喜んだのも無理ないよ。ムーディがシェーマスに聞かせてた話を聞いたか? エイプリルフールにあいつの後ろから『バーッ』って脅おどかした魔女に、ムーディがどういう仕打ちをしたか聞いたろう? それに、こんなにいろいろやらなきゃいけないことがあるのに、その上『服従ふくじゅうの呪文』への抵てい抗こうについて何か読めだなんて、いつ読みゃいいんだ?」
四年生になって、今学年にやらなければならない宿題の量が、明らかに増えていることに気づいていた。マクゴナガル先生の授業で、先生が出した変へん身しん術じゅつの宿題の量に、ひときわ大きい呻うめき声が上がったとき、先生は、なぜそうなのか説明した。
「皆さんはいま、魔ま法ほう教育の中で最も大切な段階の一つに来ています!」
先生の目が、四角いメガネの奥でキラリと危険な輝かがやきを放った。
「『O・W・L』、一般に『ふくろう』と呼ばれる『普ふ通つう魔ま法ほうレベル試し験けん』が近づいています――」
「『O・W・L』を受けるのは五年生になってからです!」ディーン・トーマスが憤ふん慨がいした。
「そうかもしれません、トーマス。しかし、いいですか。皆さんは十二分に準備をしないといけません! このクラスでハリネズミをまともな針山に変えることができたのは、ミス・グレンジャーただ一人です。お忘れではないでしょうね、トーマス、あなたの針山は、何度やっても、誰かが針を持って近づくと、怖こわがって、丸まってばかりいたでしょう!」