みんなの視し線せんに気づいたハーマイオニーは、私の読んだ本を、ほかの誰も読んでないなんて……という、いつもの歯は痒がゆそうな口調で言った。
「『ホグワーツの歴れき史し』に全部書いてあるわよ。もっともこの本は完全には信用できないけど。『改かい訂ていホグワーツの歴史』のほうがより正確ね。または、『偏へん見けんに満みちた、選せん択たく的てきホグワーツの歴史――イヤな部分を塗ぬりつぶした歴史』もいいわ」
「何が言いたいんだい?」ロンが聞いたが、ハリーにはもう答えがわかっていた。
「屋や敷しきしもべ妖よう精せい!」
ハーマイオニーが声を張り上げ、答えはハリーの予想どおりだった。
「『ホグワーツの歴史』は千ページ以上あるのに、百人もの奴ど隷れいの圧あっ制せいに、私たち全員が共謀きょうぼうしてるなんて、一言も書いてない!」
ハリーはやれやれと首を振り、炒いり卵を食べはじめた。
ハリーもロンも冷れい淡たんだったのに、屋敷しもべ妖精の権利を追求するハーマイオニーの決意は、露つゆほどもくじけなかった。たしかに、二人ともS・P・E・Wバッジに二シックルずつ出したが、それはハーマイオニーを黙だまらせるためにだった。二人のシックルはどうやらむだだったらしい。かえってハーマイオニーの鼻息を荒くしてしまった。それからというもの、ハーマイオニーは二人にしつこく迫せまった。まずは二人がバッジを着けること、それからほかの生徒にもそうするように説得しなさいと言った。ハーマイオニー自身も、毎晩グリフィンドールの談だん話わ室しつを精せい力りょく的てきに駆かけ回り、みんなを追い詰めては、その鼻先で寄付集めの空あき缶かんを振った。
「ベッドのシーツを替かえ、暖だん炉ろの火を熾おこし、教室を掃除し、料理をしてくれる魔法生物たちが、無給で奴ど隷れい働ばたらきしているのを、みなさんご存ぞん知じですか?」ハーマイオニーは激はげしい口調でそう言い続けた。
ネビルなど、何人かは、ハーマイオニーに睨にらみつけられるのが嫌いやで二シックルを出した。何人かは、ハーマイオニーの言うことに少し関心を持ったようだが、それ以上積極的に運動にかかわることには乗り気でなかった。生徒の多くは、冗談じょうだん扱いしていた。