「ウィーズリー、帽ぼう子しが曲がっています」マクゴナガル先生からロンに注意が飛んだ。
「ミス・パチル、髪かみについているバカげたものをお取りなさい」
パーバティは顔をしかめて、三みつ編あみの先につけた大きな蝶飾ちょうかざりを取った。
「ついておいでなさい」マクゴナガル先生が命じた。「一年生が先頭……押さないで……」
みんな並んだまま正面の石段を下り、城の前に整列した。晴れた、寒い夕方だった。夕ゆう闇やみが迫せまり、禁じられた森の上に、青白く透き通るような月がもう輝かがやきはじめていた。ハリーは前から四列目に並び、ロンとハーマイオニーを両脇りょうわきにして立っていたが、デニス・クリービーが、ほかの一年生たちに混じって、期待でほんとうに震ふるえているのが見えた。
「まもなく六時だ」ロンは時計を眺ながめ、正門に続く馬車道を、遠くのほうまでじっと見た。
「どうやって来ると思う? 汽車かな?」
「違うと思う」ハーマイオニーが言った。
「じゃ、何で来る? 箒ほうきかな?」ハリーが星の瞬またたきはじめた空を見上げながら言った。
「違うわね……ずっと遠くからだし……」
「移動キーか?」ロンが意見を述べた。「さもなきゃ、『姿現すがたあらわし』術かも――どこだか知らないけど、あっちじゃ、十七歳未み満まんでも使えるんじゃないか?」
「ホグワーツの校内では『姿現わし』はできません。何度言ったらわかるの?」ハーマイオニーはイライラした。
誰もが興こう奮ふんして、次第に薄うす暗ぐらさを増す校庭を矯ためつ眇すがめつ眺ながめたが、何の気配もない。すべてがいつもどおり、静かに、ひっそりと、動かなかった。ハリーはだんだん寒くなってきた。早く来てくれ……外国人学生はあっといわせる登場を考えてるのかも……ハリーは、ウィーズリーおじさんがクィディッチ・ワールドカップの始まる前、あのキャンプ場で言ったことを思い出していた――「毎度のことだ。大勢集まると、どうしても見み栄えを張りたくなるらしい……」